今回は、重症円形脱毛症(頭皮面積の50%以上の脱毛)の治療についてお話しします。
発症より6ヶ月以内の重症円形脱毛症にもっとも有効な治療法は、ステロイドパスル療法(以下パルス)です(1)。
発症後3ヶ月以内であれば、パルスによる完全寛解率は92.9%ですが、1年以上経過している患者さんの完全寛解率は0%という報告があります(2)。如何に早期治療が大切かがわかります
不幸にも、パルスが不十分な結果に終わった患者さんの次なる治療法は、局所免疫療法を行います(1, 3)。それでもダメなら当院ではエキシマライト光線療法(以下エキシマ、下写真)を行います。それでもダメなら・・・・。これ以上は企業秘密です
では、現在治療中の重症円形脱毛症の患者さんの中から掲載許可が得られた方を2例提示します。
【Case 1】
以前当ブログで紹介した患者さんです。全頭型脱毛のため2度のパルス、ナローバンドUVB、局所免疫療法などを行った結果、ここまで改善しました。しかし、半年間の局所免疫療法でもこれ以上改善はしませんでした。
(下写真:2010/11/26)
よって、エキシマを行った結果、徐々に発毛(上写真:2ヶ月後、下写真:5ヶ月後)。
現在、エキシマ治療終了から3ヶ月経過するも再発はありません。現在は、アレグラのみ内服されています。
【Case 2】
次の患者さんは、1年前より他院でプレドニン25mg/日内服をされていました。当院に転院されたためパルスを行い、内服プレドニンを2ヶ月かけて漸減中止しました。ステロイド漸減と同時に局所免疫療法を開始しましたが、副作用の接触皮膚炎(かぶれ)がひどくなり中止を余儀なくされました。
(下写真:2011/03/08、当院初診時)
幸いにも、エキシマに変更してみるみる発毛してきました。この患者さんは現在もエキシマのみで治療中です。
(下写真:2011/08/06)
とにかく、重症の円形脱毛症は早期に治療を開始することが大切です。早期治療によりしっかりと進行を食い止めたからこそ、局所免疫療法やエキシマが生きてきます。
軽症と思われる円形脱毛症でも、急激な悪化をみることがあります。円形脱毛症になったら、すぐに皮膚科専門医にて適切な治療を受けましょう。
(参考文献)
(1)荒瀬 誠治、他. 日皮会誌 2010; 120: 1841―1859
(2)Myung IM, et al. J Dermatol 2011; 38: 767–772
(3) 小野田 雅仁、他. 日皮会誌2011; 121: 699-704
(院長)
*軽症〜中等症の患者さんで、いきなりパルスやエキシマを行うことはありません。標準的な内服や外用、あるいは局所注射などで治療を行います。
以前、当ブログ「紫外線と薬剤(特に湿布)」でも紹介した湿布薬「モーラステープ」による皮膚炎の方が連日来院されています。
この皮膚炎は、湿布を貼ったところに紫外線が当たって発症します。
湿布の主成分(ケトプロフェンなど)による薬剤性光線過敏症です。
基本的に、四肢などの露出するところへの湿布の使用は控えてください。どうしても貼りたい場合は、遮光をしてください。貼って数ヶ月後に日光をあびても出現することがあります。
他の湿布薬でも起こる可能性はありますが、モーラスによるものが圧倒的に多いですね 注意してください。
(院長)
ここ数日、越前海岸はよく晴れて波も穏やかで、最高のダイビング日和でした。
特に昨日のボートダイビング(ボートポイント:アゼグリ)は、透明度15m以上、ところにより20mオーバーなところもあり、まさに越前ブルー。すごくきれいでした
カンパチ(下動画で、6−8秒当たりにダイバーの前を横切る群れ)による小アジの捕食シーンで、逃げ惑う小アジの大群は見応え十分でしたね
お盆休みも終了です。明日から診療開始します。がんばるぞ!
(院長)
この前の週末は、熱かったですね 海水浴に行かれた方も多かったと思います
私は、職員のダイビング講習およびファンダイビングに行ってきました。駐車場がすぐにいっぱいになるため朝6時に出発です
ダイビング前に、みんな真剣に機材チェックをしています。簡単な故障はすぐに自分で修理してしまいます
『チームあひる』のダイブマスター(→:あひる)から指導を受けていますね。「はい、ベルトを装着して」
当院師長と私は、NAUIダイビングインストラクターでして、講習はもっぱら師長が行い、私はファンダイビングのガイドを主に担当しています。
この日のファンダイビングは、桃源郷〜奥桃源(ダイビングスポット)に行ってきました。魚影が一段と濃くなっていました。
YouTubeに先週の越前海岸の動画がありました。場所は、いつもの壁石浜から近い長須浜です。越前ブルーですね〜
ところで今週は、海水浴皮膚炎の方が2名来られました。
1人目は、体に痒い丘疹(ぶつ)が多発しています(下写真)。よくみると、水着に覆われた部分にのみ皮疹があります。
2人目は、波打ち際の濡れた砂浜に足を突っ込んでいたそうです。その後砂に埋もれた部分にのみ丘疹が出現。
海水浴皮膚炎は、以前ブログで述べたように、ゾエアと呼ばれるエビやカニ、ヤドカリなどの甲殻類の幼生(プランクトン)による皮膚炎です。1例目の水着に一致して出現するのが典型です。
海水浴もそろそろ終わりですね。でも、越前のダイビングのベストシーズンは9月です。ここから2ヶ月間は、ガンガンに潜ります
(院長)
前回は、手足口病の大流行についてお話しました。
今年の手足口病は、コクサッキーA6による皮疹の重症な患者さんが多いです
今年の手足口病で注意しなければいけないことが、もう1つあります。それは、爪の変形、脱落です。
コクサッキーA6による手足口病に特徴的で、発症して1−2ヶ月で爪がはがれてきます1), 2)。
下写真は、一昨日爪がおかしいということで受診された患者さんです。この子は、6月末に手足口病に罹患しました。
この子は、昨日受診の子供です。この子も6月ごろに手足口病にかかっていました。
この子の母趾は爪床剥離を起こし、ひっかけたか何かで出血してびらんになっていました。皮膚科医ですから、きれいに爪甲処置(爪切り、外用など)をしてあげました
今後、6、7月に手足口病に罹患した患者さんから、このような爪の症状を訴える方が急増してくると予想されますね
(参考文献)
1) 難波千佳,藤山幹子,橋本公二,他:手足口病後に生じた爪変形、爪脱落の集団発生.日本皮膚科学会 2010;120:754.
2) 宮本麻子,石本和久,平田留美子,他:水痘様発疹分布とonychomadesisを生じたコクサッキーA6 による手足口病のoutbreak.日本皮膚科学会 2010;120:755.
(院長)
手足口病が全国的に大流行しています。手足口病は、エンテロウイルスによる夏風邪の一種で、主に手と足と口に発疹がでます。
実はすでに、日本臨床皮膚科医会雑誌4月号に夏の大流行を予測する記事が載っていました(赤下線部)。
特徴としては、熱(無いこともある)などの感冒症状があり、それに伴って手足や口腔粘膜に紅斑〜小水疱が出現してきます。子供だけでなく、大人にもうつることがあります
典型的には、下の写真のように手と足の指紋に長軸をあわせた楕円形の水疱が特徴的です。
ほとんどのケースが軽症で1〜2週間で自然に軽快しますが、今年は非典型的な皮疹を有する重症例が割と多いですね
こんなに激しい水疱の子供もいました。
手足口病の治療上の注意点は2つ考えられます。
①エンテロウイルス71のように、髄膜炎や脳炎を併発するケースがあります。経過中に、「元気がない、頭痛、嘔吐、高熱が2日以上続く」などの症状があれば注意が必要です。幸いにして、今のところコクサッキーA6やA16が多いようです。
②今年の手足口病は症状が激しく、皮疹の二次感染(細菌感染)や、口腔粘膜症状の悪化からの経口摂取不良による脱水などが懸念されます。
予防には、便中へのウイルス排泄が長期につづくため、糞便の始末と手荒いの励行が最も大切です
手足を中心に発疹が出た場合は、すぐに皮膚科か小児科を受診しましょう。
(院長)
*上の2枚の臨床写真は、福井赤十字病院皮膚科 中川先生提供です。
*最近、爪に異常をきたす子供を見かけます。ほとんどが、手足口病発症後数週でなっています。『近年、コクサッキーA6ウイルスによる手足口病が発生した欧州では、治った数週間後につめが浮き上がってはがれたり変形したりする事例が報告されているという。感染研は日本でも今後、同様の症状がみられる可能性があるとしている。』という記事を見つけました。なるほど。
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