ステロイド軟膏の副作用とは?
副腎皮質ステロイド(以下ステロイド)外用剤(塗り薬)の副作用を誤解している方が結構おられます
当院の患者さん向けに簡単な説明をしたいと思います
当院でもっとも使用量の多いロコイドのデータ(承認時までの調査及び使用成績調査)をまず示します①。
19018人中、副作用発現はたったの58人(0.3%)。 ほとんどが、かゆみと刺激感(20人)>にきび様皮膚炎(9人)です。
気を付けなければいけないのは、にきび(ニキビ)くらいですね。
何もおそろしい副作用などありません。効果と安全性は確立しています②。
まだあまり知られていませんが、強いクラスのステロイド外用剤まで普通に市販されています。
本日、あるドラッグストアで見た外用剤の棚です。これらのほとんどにステロイドが入っていましたね。 それも当院が普段使用しているものより強いものが結構ありました。
ムヒ(EX)にもステロイドが入っていました。これはロコイドより強いですね。
国は、ステロイド外用剤はもう医師の診察が必要ないくらいに安全だと考えているのでしょうかね
しかし安全とはいっても、乱用が少し気になります。長期に使用される場合は、医師や薬剤師に相談されることをお勧めします
よく聞かれる質問に、「皮膚が黒くならないの?」、「ステロイドが蓄積するのでは?」がありますが、これらの副作用はありません②
人間の体からは、ステロイド外用剤よりはるかに多量のステロイドが副腎より毎日生産されています
人体にとって、ステロイドは大切なホルモンなんです。
もともと多量にもっているのに、黒くなるとか、蓄積やデトックス(解毒)なんていうのはおかしな話ですね
強いステロイド外用剤(クラスⅡ)であるアンテベートのデータ(承認時までの調査及び使用成績調査)も示しますね②。
7,875例中105例(1.33%)に副作用が発現した。
主な内容は、かぶれによると思われるかゆみ(0.08%)や刺激感(0.11%)が稀にでる。毛のう炎&にきび(ニキビ)、水虫、皮膚萎縮が、稀に(0.3%)あるいはごく稀に(0.008〜0.009%)でる。
皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)や水虫を専門医はまず起こしませんので、これも注意すべきはかぶれと毛のう炎&にきび(ニキビ)ですね。
(文献)
(1) ロコイド軟膏&クリーム 添付文書
(2) 古江 増隆ら:日皮会誌:119(8),1515―1534,2009.
(3) アンテベート軟膏&クリーム 添付文書
(院長)
最近ステロイド外用剤の依存症(topical steroid addiction)を心配する患者さんをたまに見かけます。 この言葉は、1978年にKligmanがあまり有名でもない雑誌に載せたのが最初で最後ですね。彼もそれ以後使用していないようですし、ここ10年以上そのような論文を少なくとも英文では見たことがありません。で、PubMedで調べてみたらやはり90年代に2件の論文のみでした。それも1件は顔にニキビが出たというもので、もう1件は美容レーザー治療後のステロイド使用による副作用(にきび様皮膚炎)でした。これらの論文は、上述の副作用(にきびなど)が、まだあまり世間に知られていなかった頃に、副作用の注意喚起をするために書かれた論文ですね。この死語のような言葉をまたぞろ使用している人がいるのには驚きです
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