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2012年6月

2012年6月26日 (火)

乳児アトピー性皮膚炎の治療目的shine

乳児のアトピー性皮膚炎(以下アトピー)の治療で、いつも困惑することがありますbearing

 

「数日で症状が良くなったので、ぬり薬は勝手に止めました。」coldsweats01と母親から告げられることです。

 

ここには、大きな誤解があるのですweep

 

保湿剤やステロイド軟膏などの外用治療の目的は、今ある症状を無くすことだけではないのですconfident

 

cherry目的の1つは、アトピーの発症および重症化の予防です。①②③

これについては、以前当ブログ「アトピーの発症は予防できる。」でも説明していますwink

 

下図の右側のように、皮膚バリアー障害フィラグリン遺伝子異常など)を有する子供は、どんどん皮膚からアレルゲンが入っていきますshock①②④ 

Filaggrin011

 

赤ちゃんの免疫細胞は、皮膚から入ってくるビスケット(小麦や卵)やピーナッツなどの屑やハウスダストなどの埃(アレルゲン)にさらされ続け炎症(免疫反応→感作成立)を絶えず起こします(上図の右側)shock③④

 

ラット(ねずみ)を使った実験では、この炎症が何度も起こると、徐々にアトピーの状態に移行していくことが知られていますshock

 

継続した外用治療によって皮膚のバリアーを改善維持させてこの炎症を抑えることは、アトピーの発症を予防し、その後の喘息などのアトピーマーチを回避することになるのです(上図の左側)happy01①③

 

また、発症してしまったアトピーについても、その重症化を防ぎ、大部分のアトピーの子供を治癒に導くことも分かってきています②

 

よって、治療をしなくても皮膚症状がでなくなる時期(*)まで外用治療は継続する必要があるのですconfident

 

banana2つ目の目的は、食物アレルギー発症の回避です。①②⑤

どうやら食物アレルギー(food allergy)は、皮膚からのアレルゲン侵入(cutaneous exposure)によって起こり、口からのアレルゲンの摂取(oral exposure)は、むしろアレルギーを抑える働き(免疫寛容、tolerance)があるようです(下図)⑤

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(Lack G:The Journal of Allergy and Clinical Immunology 2008;121: 1331-1336.より引用)

 

よって、継続的な外用治療で皮膚からのアレルゲン侵入を極力抑える必要があるのですconfident

 

外用治療をしっかり行うと、食物アレルギー自体も改善し、卵や小麦などの特異的IgE抗体も低下していくことが分かってきています。②

 

口から入る食物アレルゲンは、むしろ食物アレルギーを抑える(治す)働き(tolerance)がありますwink⑤⑥

 

乳児アトピーの子を持つ母親が、授乳中のため食餌制限をしてるのを時折見かけますが、むしろ免疫寛容tolerance)という点ではマイナスでしょうcoldsweats01

Mi201025f1
(Verhasselt V:Mucosal Immunology 2010;25: 326–333より引用)

 

今年の日本皮膚科学会総会でも、アトピー治療で有名な演者が「どうやら、アトピー治療における食餌制限は間違いだったようです。」と述べられたのは感慨でしたhappy02 

 

最後に、われわれの乳児アトピー治療における目的は、現在の症状を治すことはもちろん、アトピーの発症を予防することや、発症したアトピーを重症化をさせずに寛解・治癒に持ち込むこと、そして後に起こる食物アレルギーや喘息などのアトピーマーチを回避することにあるのですconfident

 

乳児アトピーと大人のアトピーとでは、治療目的が異なるのですねconfident

 

乳児アトピーの治療経過は、6〜8ヶ月が最も症状が強く、その後改善して行きます。1才くらいには治癒する子供も見られます。2才くらいには、冬に悪化する程度になり、3才くらいには多くの子供が寛解治癒していきます②
(乳児期早期より継続的に治療した方の経過です。無治療自然経過ではありません)

 

(参考文献)
①Simpson EL, et al.: J Am Acad Dermatol 2010;63:587-93.
②片岡葉子: 第111回 日本皮膚科学会総会 教育講演34
③秋山真志: 日医雑誌 2010;138:2536-7.
④Komatsu N, et al.: Br J Dermatol 2005;153:274- 81.
⑤Lack G: The Journal of Allergy and Clinical Immunology 2008;121:1331-36.
⑥Verhasselt V: Mucosal Immunology 2010;25:326–33.

(院長)

〠918-8105 福井県福井市木田3丁目2605 
にしむら皮フ科クリニックのホームページ

2012年6月16日 (土)

毛虫皮膚炎にご注意!shockshock

チャクドクガの幼虫(毛虫)による皮膚炎の患者さんが急増しています。連日5、6人の受診があります。

下の写真は、数日前に当院を受診された患者さんです。腕に細かな丘疹(ぶつぶつ)が集簇しています。凄く痒そう!bearing
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--

チャドクガは、ゴールデンウイーク頃に卵が孵化して毛虫となり、6、7月頃に羽化して蛾(ガ)となります。これが卵を生んで、またそれが孵化して8、9月に毛虫になるという、2度の発生をします。よって、被害は二層性にきます。また、庭木としてのツバキサザンカに大発生することがあり、実害としては毛虫の中では最大ですweep
(下動画:チャドクガ幼虫)

 

 

毛虫は何百万本という毒針毛という毒針(長さ0.1〜0.2mm)をもっています。これが皮膚に刺さって症状を引き起こしますshock(下写真は日本皮膚科学会ホームページより)
Q1001
--

詳しくは、昨年のブログにまとめました。参照してください。

不定期に、毛虫の大発生の年が回ってきます。今年は、大発生の予感がしますcrying 気をつけてくださいthink

安易に市販薬などで治療していると、患部が徐々に広がっていくことが多くweep、被害にあったときには医療機関hospitalへすぐに受診することが大切ですねhappy01

一昨日受診された全身に皮疹が広った患者さんcrying 夜も眠れないくらい痒かったそうですshockshock
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(院長)

bananaちなみにブログ掲載の写真は、本人の同意を得ています。

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2012年6月13日 (水)

本日は休診日sun

本日は、久しぶりに午前中はゆっくりできましたhappy01


ノラcatもお気に入りのソファでのんびりしています。気持ちよさそうhappy01
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午後からは、福井赤十字病院で下肢静脈瘤の手術をしてきました。手術は20分ほどで終了でしたhappy01


術式は、(高位)結紮術です。近頃では、どの施設でも血管内レーザー治療にかわって来ているようですね。


しかし最近のデータでは、効果や合併症において結紮術などの従来の治療とは優位差は出なかったようですよ。①


僕自身は、簡便で侵襲の少ない結紮術は好きですねwink 


(参考文献)
①Knuth Rass, Norbert Frings, et al. :Comparable Effectiveness of Endovenous Laser Ablation and High Ligation With Stripping of the Great Saphenous Vein Two-Year Results of a Randomized Clinical Trial (RELACS Study)
Arch Dermatol. 2012;148(1):49-58.

(院長)

banana福井県では、現在のところ血管内レーザーによる下肢静脈瘤治療を行っている施設は無いようです。

2012年6月10日 (日)

毛細血管拡張性肉芽腫の結紮療法4〜テクニック公開?〜

毛細血管拡張性肉芽腫(pyogenic granuloma : PG)は、日常診療でよく遭遇する血管腫の一種です。


PGの結紮療法(糸で結ぶ)は、このブログで何度か紹介しました。①② 


しかし、知り合いの医師から、あまりに大きいものや小さ過ぎるものは巧くいかないと言われることがありますcoldsweats02


今回は、それらの結紮術で巧くいかなそうなケースへのちょっとしたテクニック(?)を公開しましょうhappy01


3週間ほど前に、凄く大きなPGの方がこられました。茎部が結構太く、まあ本体もかなり大きいので結紮は難しそうですcoldsweats01
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当院は、それでも無麻酔で結紮ですconfident 結紮しても茎が太いので血流の十分な遮断ができず、虚血による変色が起こりません。
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こういったケースでは、当日は液体窒素で冷凍療法を行い、後日2回目、3回目と何度も結紮します② 洗髪はOKです。
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3回結紮時にようやく変色しはじめましたhappy01 もう一度冷凍療法を行い、1週間後に受診予約です。
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1週間後の受診です。腫瘍は完全に痂皮化しています。
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セッシで簡単にポロッと取れましたgood
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これ手術を行ったら、ちとハゲますねcoldsweats01 レーザーで行ったら出血が凄いでしょうshock 結紮簡単でいいでしょhappy01


これだけ大きいと悪性腫瘍と鑑別する必要があります。 ダーモスコピーと病理検査は必須です。①②


くれぐれも悪性腫瘍を結紮shockすることのないように注意して下さいねcoldsweats01
--


次は、小児のPGです。小児の場合、このように小結節なことが多いです。結紮方法は参考文献を参照してください。②
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小結節は、結紮によりすぐに虚血して変色します。よって、1回の結紮で済むことが多いのですが・・・。
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このように、結紮後に少しのこってしまうケースがたまにありますshock
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このようなケースでは、レーザーで残りを取ることも可能ですが、3ヶ月くらい待ってください。必ず消失しますhappy01
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別の小結節型PGのケースです(上写真:結紮後、真中写真:PG残存、下写真:3ヶ月後)。3ヶ月でほぼ消失していますgood
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なぜ消えて行くかは不明です。平になったので触らなくなったからでしょうか?coldsweats01 わかりませんsweat01


少し残っても慌てて処置をする必要はありません。経過をみてください。大抵は縮小していきますgood


(参考文献)
①Nishimura Y : Ligation therapy for pyogenic granuloma. J Dermatol. 2004 ; 31(8) : 699-700.
②西村陽一:毛細血管拡張性肉芽腫に対する結紮療法. 皮膚の科学 2008 ; 5(6): 440-444.

(院長)

cherry県外の方は、この治療をお断りしております。連絡もなく県外から突然受診され、治療を強要される方がおられますが、全てお断りしております。県外の方で、当院の通院指示を守ってもらえた方がほとんどおられません(1例をのぞいて)。治療に対する責任がありますのでご理解下さい。また、他県でこの治療を行っているクリニックの照会の電話が多いのですが、全くわかりませんのでご遠慮下さい。

banana小結節型PGが残存した場合、3ヶ月でかなり縮小しますが、完全に消えるのに半年以上かかるケースもあります。

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2012年6月 7日 (木)

第111回日本皮膚科学会総会 その2

前回のつづきです。
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今回の学会でまず良かったことは、iPhone用の学会アプリが製作されていたことです。
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これがなかなかのすぐれもので、学会のスケジュールから抄録まですべてiPhonemobilephoneで見れましたgood


大きなプログラム冊子を持ち歩く必要もなく大変便利でしたねhappy01


年に1回の総会なので、できるだけ多くの演題を聴こうということで、当院師長と二手に別れて演題を聴きましたhappy01


次の講演会場に向かう途中の会場内は、大混雑sweat01 みんないい席を取ろうと一目散ですcoldsweats01
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私は、アトピー性皮膚炎(以下アトピー)乾癬を主に聴講しました。


アトピーは、長年の研究の成果が次々と開花cherryblossomしてきているようですね。


経皮感作という病因論からのアトピーの発症予防、バリア機能の研究からの新薬の開発、TARC(ターク)というバイオマーカーを使用しての治療などなど・・・・happy02good


アトピーの免疫に関する講演を聴きにいくと、よく椛島先生の発表に出会いました。これだけの発表の準備をするのって大変ですよねcoldsweats02
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椛島先生とは発表後に少し話しましたが、人気ものなのでなかなかゆっくりお話できなかったですねcoldsweats01

乾癬生物学的製剤の出現で、今まで治療不可能だった重症患者さんの治療に大変革をもたらしました。


生物学的製剤レミケードのメーカー田辺三菱のブースは、企業展示場の入り口に陣取ってかなり気合いが入っていましたねhappy01そのブースで写真を1枚camera
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(写真は左から、長浜赤十字病院の谷崎先生、師長、私、福井赤十字病院の中川先生)


乾癬生物学的製剤が主に話題でしたが、従来からの外用療法、光線療法、ネオーラルなどの内服治療の知識もアップデイトできて良かったですhappy02

レーザー治療の新しい話題は、フラクショナルレーザーでした。


当院は、キャンデラ社の炭酸ガス・フラクショナルレーザーCO2RE(コア)を所有しています(写真:キャンデラ社のブース、写真の一番手前がCO2RE(コア))。
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師長は、DEKA社炭酸ガス・フラクショナルレーザーマドンナリフト(眼瞼下垂治療)の講演がすごかったと言っていました。


マドンナがこの治療を受けたらしいとのことですが、真偽はどうなんでしょうか?


で、レーザーでご高名な某先生にお尋ねしたところ、他社の機械ですでに行っているらしく、炭酸ガス・フラクショナルレーザーであればどれも結果は同じだろうということでしたが・・・wink


光線療法では、それほど新しい話題はなかったですね。エキシマライト(以下エキシマ)が相変わらず話題の中心でした。


企業ブースに、こんなかわいいナローバンドUVBのハンディータイプのものが展示されていましたhappy01
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エキシマのハンディータイプもでたので、やや影が薄いですねhappy01


ただ、エキシマの効果については、やや大げさに報告されているような気がしました。


特に、乾癬への効果に関していうと少し失望しています。案外このナローバンドUVB、高輝度ですし、エキシマといい勝負をするかもしれませんhappy01


ほとんど聴講していたので、知り合いに合うことはあまりありませんでしたが、懇親会で何人かとお話できました。


私が非常勤講師を勤める滋賀医科大学皮膚科の田中教授とcamera
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京都大学皮膚科勤務時代に一緒だった中村先生は、最近産業医大皮膚科の教授に就任されましたcamera
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疲れましたが、充実した学会でしたwink


学んできたことを早速外来に反映するべく努力したいと思います。

(院長)

〠918-8105 福井県福井市木田3丁目2605 
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2012年6月 4日 (月)

第111回 日本皮膚科学会総会 

6月1日(金) 午後 ~ 6月2日(土)は、臨時休診とさせていただき、ご迷惑をおかけしました。


日本皮膚科学会総会(国立京都国際会議場)から本日帰ってきました。
Kokusai10

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3日間缶詰状態で勉強してきました。ものすごく疲れましたが大変充実しましたhappy02


膨大な発表があり、全てを聴くことは不可能ですねcoldsweats01


今回は「アトピー性皮膚炎」、「尋常性乾癬」、「レーザー治療」、「光線療法」にしぼって聴講しました。


アトピー性皮膚炎だけでも8時間も聴講してきたので、まだ知識の整理ができていませんが、アトピーの病態がここまでわかって来たのかと驚きましたhappy01


新知見や今後の治療に取り入れたいことなど膨大な情報が入手できましたgood 


この学会会場は、好きな会場の1つです。講演の合間に、庭園を散歩すると実に気持ちがいいですねhappy01
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昨年は、大震災で中止になったこともあり、今年は凄い数の参加者でしたcoldsweats02(写真:懇親会の様子)
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写真は、企業ブースです。総会だけに多くの企業が出展していました。
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これは、キャンデラ社のブースですね。当院はこの会社のレーザーを4台所有しています。
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この会社は、他社と違ってどのレーザーも日本の医療機器承認を得ようと頑張っていますhappy02


またアフターケアや情報などもしっかりしているのが良いですねwink


このブースは、JMEC社のですね。当院はこの会社のVTRAC(エキシマライト)を所有しています。
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今学会では、現在販売されている4つのエキシマライト機器のうちどれがよいかが話題でしたね。


値段で決めない方がよいですよ。治療効果と効率を上げたいのなら照射率が大切ですねwink


つづく。

(院長)

*今回の臨時休診は、1ヶ月以上前から院内掲示等でお知らせしています。

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