ピーナッツアレルギーの話題2
前回の話題は、ピーナッツアレルギー(Peanuts allergy: PA)の疫学調査から、食事制限は食物アレルギー発症のリスクを高めるかもしれないというお話でした
落花生油(ピーナッツオイル)のクリームを体にぬっている子供にPAが多いという報告です①
これは、食物アレルギーは皮膚から入る食物(アレルゲン)が原因で発症する可能性が高いことを示しています。
くしくもこれを「お茶石けん」が証明したのは記憶に新しいことと思います
お茶石けんに含まれていた加水分解小麦の粘膜(目や鼻)や皮膚からの侵入が、重篤な小麦アレルギーを引き起こしてしまった事件ですね
これらのことから近年注目を浴びているのが、Lack G先生の二重アレルゲン曝露仮説 です(下図)②
食物アレルゲンの経口摂取(oral exposure:経口暴露)は、食物アレルギーの発症を抑制(tolerance)し、皮膚からの食物の侵入(cutaneous exposure:皮膚暴露)は食物アレルギー(allergy)を引き起こすという考えです
またこれは、皮膚からの食べ物の侵入を防げば、食物アレルギーの発症も防げる可能性を示唆しています。②
この侵入経路でもっとも注目されているのが乳児湿疹や乳児アトピー性皮膚炎(以下アトピー)なんですね①②
これは、外用治療を全くしていないアトピーの小児のお肌ですが、もう皮膚バリアがぼろぼろですね この肌じゃ、食べ物(例えばビスケットの屑など)やほこりなどアレルゲンがどんどん皮膚の中に入って行きそうですね
実際に、乳児期早期から適切な外用治療(ステロイド軟膏や保湿剤などのぬり薬)で皮膚のバリアを改善させると、食物(アレルゲン)の皮膚からの侵入が少なくなり食物アレルギー発症を回避させる可能性が報告されてきています②③④
さらに外用治療でアトピーだけでなく食物アレルギーそのものも改善し、特異的IgEも低下することが報告されています④
以上のことから、食物アレルギーのもっとも有効かつ安全な予防法は、乳児期早期からの外用治療であるようです
外用治療が不十分な乳児湿疹や乳児アトピーの子を持つ親御さんが、すぐに食事制限をしたがるのを制して、まずぬり薬ですと外来で強く強調しているのは以上の理由からなんです
(参考文献)
①Lack G et al.: N Engl J Med 2003; 348:977-85.
②Lack G : J Allergy Clin Immunol 2008; 121: 1331-6.
③Simpson EL, et al.: J Am Acad Dermatol 2010;63:587-93.
④片岡葉子: 第111回 日本皮膚科学会総会 教育講演34
(院長)
今回の記事とは関係ありませんが、夏休みでもあり現在レーザーおよび手術(ほくろやシミとり、良性腫瘍の切除など)の予約が2ヶ月先までいっぱいです お急ぎでなければ秋以降に予約が減ってきますのでその時期の受診をお勧めします お急ぎの方は、私が信頼をおいている形成外科医あるいは皮膚科医に紹介させていただきます 電話でのご相談はお受けしておりませんのでご遠慮ください