« 2012年9月 | メイン | 2012年11月 »

2012年10月

2012年10月25日 (木)

皮膚癌は侮れない!

先週、30才代の方の黒子(ほくろ)の手術(切除術)をしました。

 
写真はこれです。鼻翼外側にほくろ? 直径2mm程度なんですcoldsweats02
Img_0444
 
 
なぜレーザーでなく手術(切除)を選択したかというと、ダーモスコピー検査の所見がこれだったからですwobbly
59f757e860914ffdb143487ee6a85deb
 
 
専門医の方はおわかりですよね。multiple blue-gray globules + arborizing vesselsなどから基底細胞癌が強く疑われますshock
 
 
この若さでこの大きさ、見逃しそうcoldsweats01
 
 
マージンを1mm以上とって切除しました。病理検査はやはり基底細胞癌でした。
 
_15_2
 
表皮下面からbuddingしている腫瘍細胞がみてとれます。cleftもありますね。
_16
 
 
手術方法は、Open treatment + purse-string suture、いわゆるくり抜き巾着術です。
 
 
この手術法は、5mm以下の黒子などの腫瘍には、レーザー並(以上?)にきれいに仕上がり、術後処置も簡単で、良性なら再発の心配もなく、病理検査もでき、悪性の再発も発見し易いなど良いことずくめですhappy02
 
 
この治療法は、いつかまとめて報告しますねwink
 
 
とにかく黒子(のようなできもの)を侮ってはいけませんbearing
 
 
検査もせずに安易にレーザーなんかで、ジャーと取ってもらったらダメですよng
 
 
顔に何か黒子のようできものができて心配な方は、皮膚科専門医に相談しましょうhappy01
 
 
(院長)
 
appleこの患者さんは、病理検査で完全に切除されているのを確認しました。恐らく再発はないでしょう。また、ブログ掲載に快く承諾いただきまして誠に感謝しております。
 
banana当患者さんのその後(手術後4ヶ月)の経過です。再発はありません。術創は少し赤いですが、この程度であれば1年後は全くわからなくなりますねhappy01
Img_3477
 

にしむら皮フ科クリニックのホームページ

2012年10月21日 (日)

指趾粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)の診断と治療

今回は、専門医向けのちょっとだけ難しい話題ですconfident
 
 
ここ数日、指先に下写真のような膨らみ()ができたという患者さんが何人かこられました。
Img_9850_2
 
これは、指趾粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)あるいは単に指趾ガングリオンともいいます。
 
 
指先に粘液がたまって起こります(*)。
 
 
医師の間でも治療は厄介なものと思われていますが、意外に簡単に治療できるケースもありますhappy01
 
 
まず診断です。
 
 
すごく簡単な方法は、下から懐中電灯flairをあててみると腫瘍を光が透過します。これをFlash-Powered Transilluminationといいます①
Img_9848
 
 
器械があれば、エコー検査でもよいと思います。巨細胞腫など鑑別を要するものが結構ありますからね。
 
 
治療なんですけど、放置というのも1つの手ですね。 患者さんが納得されれば・・・coldsweats01
 
 
でも、そればかりではちょっとさみしいですよねcoldsweats01

 

有効な方法の1つは、中身(粘液)を針で突いて出し(絶対に自分でしないでくださいng)、冷凍療法することですね。
Img_9853
 
 
私は、液体窒素でspray-freezingdashします(http://clinic-n.mitelog.jp/blog/2012/09/post-c56e.html) 。アプリケーター使って限局的に冷凍しています。
 
Img_9854
 
 
これは、内部を炎症で癒着させるためなんです。綿棒でするよりspray-freezingの方が、痛みがすくなく成績もいい感じですねwink
 
 
中身を抜いて(少しだけ残して)冷凍しないと、痛すぎて患者さんから苦情がきますので要注意shockです。
 
 
再発することはありますが、気楽に行える治療ですねhappy02
 
 
これでもダメなら手術ということになります。手指に関していうと実は簡単ですhappy01
 
 
下写真のようにガングリオン周囲にフラップ(皮弁)を描いてめくり、戻すだけです(下写真)②
S_dst50029f1
(上写真:左から、術前、作図、フラップ作成、縫合、術後)
 
 
嚢腫(cyst)は必ずしも取る必要はありません。めくって戻すだけ! これだけです。
 
 
再発率8%と報告されています② 
 
 
指趾ガングリオンを昔はよく手術しました。この方法結構よかったですよgood
 
 
先日(10/17)、福井赤十字病院のカンファレンスでもガングリオンの治療が話題に上りました。そのとき私がしゃべった内容をブログにしてみましたwink
 
 
 
指趾粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)の粘液の由来により、関節液のもれでおこるganglion typeと、線維芽細胞からのヒアルロン酸過剰産生によるmyxomatous typeの2つに分類されます③
 
(参考文献)
① Calorego C, et al : Arch Dermatol 2012; 148(5) : 1-1.
② Clliford L : Arch Dermatol 2005; 141(12) : 1560-4.
③ Shimizu’s Textbook of Dermatology P383.
 
 
(院長)
 
 
cherry以上の手術は、足趾では再発率が高いようです。この方法は、指ではjoint fluid leakageを処理する必要がないということです。手術法は色々ありますので、これがベストということではありません。この方法でも再発の可能性はあり、患者さんに十分説明する必要があります。
 
tulip液体窒素療法はうまくいくまで2−3週間おきに1〜3回程度行います。
 

〠918-8105 福井県福井市木田3丁目2605 
にしむら皮フ科クリニックのホームページ

2012年10月13日 (土)

尋常性白斑の治療

今回は、当院での尋常性白斑(以下白斑)の治療をご紹介しますhappy01
 
白斑は、下写真のようにメラニンを作る細胞が消失して皮膚が斑状に白くなる病気です。
Q0103
(日本皮膚科学会ホームページより引用)
 
尋常性白斑の詳しい病態は、日本皮膚科学会ホームページを参照してください。(http://www.dermatol.or.jp/qa/qa20/index.html
 
当院での主な白斑治療は、①外用療法と②光線療法(Nb-UVB, エキシマライト)shineです。①②を1年以上行っても変化がなく、かつ進行性でない白斑には、③植皮術を行います。
 
 
外用療法:ぬり薬ですね。発症早期に治療を開始すれば、これのみで改善する方がかなりおられますhappy02 
 
2012年7月5日に受診された患者さんです。まずは外用のみで治療開始。
Img_8146
 
2012年9月25日には、外用のみで急速に改善。こんな方も結構おられるんですよねwink
Img_9556
 
外用療法も何を何処にどうぬるかなどで、ちょっとしたテクニックがあるのですwink
 
光線療法shine外用治療のみでは改善しない方に行います。基本的には、広範囲の白斑ナローナンドUVB(Nb-UVB)にて治療し、範囲が狭いものはエキシマライトを使用します。週1〜2回の通院が必要です。
 
ナローバンドUVB(311nm波長の紫外線)
Girlin3
 
エキシマライト(308nm波長の紫外線)
Photo_03
 
2種類の波長を用いることで治療選択枝が増え、白斑の治療成績が向上しますgood
 
2010/10/20。エキシマライト照射開始。
Img_4836_3
 
2011/3/3。白斑はかなり改善しましたが、エキシマライトの欠点はこの色素沈着ですねcoldsweats01
Img_5901_2
 
2012/2/10。1年後には、色素沈着も消失していますhappy01
Img_2435_2
 
植皮術光線療法でもなかなか改善しない場合は、1mmミニグラフト(http://clinic-n.mitelog.jp/blog/2011/11/1mm-5b23.html)を行っています。
 
この2年間、治療実績を積みながら改良を加えて、現在は9割程度の生着率になっていますgood
 
2012年4月19日の写真。白斑の下側を植皮(点状の褐色斑)+エキシマライトshine照射
Img_4931_2
 
2012年9月1日の写真。下側の白斑はほぼ消失したため、次に上側白斑に植皮しました。
Img_8941_2
 
2012年10月1日。エキシマライト照射を続け、上側白斑もかなり色素がでてきました。
Img_9758
 
 
もう、ここまで白斑治療をやってるところは福井県ではありません。というか、体力的にはもう限界なんですけどねsweat01
 
この植皮術は、ものすごく体力を消耗しますのでbearing
 
白斑は非常に治すのが難しい疾患ですが、ここ10年で治療法が格段に進歩してきています。
 
放置すればするほど治りにくくなりますので、早めに皮膚科専門医を受診されることお勧めします。
 
(院長)
 
tulip植皮術は、当院で1年以上治療を続けてこられた方のみに厚意で行っております。手技料はいただいておりません。
 
bananaエキシマライトは、敦賀に福井県で2台目が導入されましたので、嶺南の方はそちらをご紹介しています。
 

2012年10月 9日 (火)

祝!ノーベル賞受賞 山中教授

京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞shineを受賞されました。昨夜は、記者会見を聞きながら拍手喝采paperをしていました。

 


YouTube: 山中伸弥氏にノーベル賞 iPS細胞開発、京大教授

 

会見の中で、「日の丸のご支援がなければ・・・まさにこれは、日本国が受賞した賞です」と言われたときには、ジーンweepとくるものがありましたhappy02

 

京大出身だからというのではなく、日本人として誇りに思いましたhappy02

 

このiPS細胞は、皮膚の細胞からつくる人工多能性幹細胞で、あらゆる細胞に分化する能力があります。

 

採取の容易な皮膚細胞から何にでも分化可能な細胞を作るのですから、著しく医学が発展しそうな予感がしますhappy01

 

また、皮膚の細胞からというのが皮膚科医ごころheart04をくすぐりますよねwink またなんと、奥様は皮膚科医だそうです。

 

とにかく、山中教授ノーベル賞受賞shineおめでとうございます。

 

(院長)

 

にしむら皮フ科クリニックのホームページ

2012年10月 4日 (木)

慢性じん麻疹はいつ治るのか?

1ヶ月以上続くじん麻疹(じんましん)慢性じん麻疹と言います。

 
下写真のように連日膨疹という赤くて痒い皮疹が出没しますcrying じん麻疹のさらに詳しい病態は日本皮膚科学会ホームページを参照してください。(http://www.dermatol.or.jp/qa/qa9/index.html

Img_4359

 

ところで、慢性じん麻疹の患者さんから、「いつ治るのですか?」と訊かれることがよくあります。

 
 
抗アレルギー剤(下写真)が比較的良く効くのですが、止めるとすぐに再発するからでしょうweep
Img_3040
(当院が処方している抗アレルギー剤の一部)
 

ある報告では、6ヶ月以内の治癒率が26%1年で35%らしいです①(*) 高齢者(35才以上)と罹病期間が長い(1年以上)程治りにくいとされています② 

 
 
それにしても、治るまでの期間が長いですね〜weep
 
 
しかし、治るためには、ただ漫然と抗アレルギー剤を内服していてもだめなんですconfident
 
 
まずは、できるだけ発症早期に確実にじん麻疹を止めること(色々なテクニックがあります)②③
 
 
次に、一定期間の予防的投与(じん麻疹が出なくても内服すること)を行うこと。理想は2ヶ月以上(英国ガイドラインは3〜6ヶ月)です③④⑤
 
 
そして、漸減中止プランを立てて内服を減量していくことですwink③⑥ 実は、これが一番難しいcoldsweats01
 
 
色々な漸減法がありますが、漸減法を行わない場合と比べて再発率を64%も減せたとする報告もあります③⑥
 
 
適当に内服していては、いつまでたっても治らないかもしれませんweep
 
 
罹病期間が長くなればさらに予後が悪化しますcrying
 
 
慢性じん麻疹は、早期に計画的に治療することが大切なんですねhappy01 
 
 
(*)各予後報告でのデータのばらつきが大きく、参考程度と考えて下さい。
 
 
(参考文献)
①Kozel, et al.: J Am Acad Dermatol, 2001; 45: 378-91.
②第111回日本皮膚科学会総会 教育講演19
③日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」
④Powell RJ, et al.: Clin Exp Allergy 2007; 37: 631-50.
⑤川島 眞、幸野 健:臨床皮膚科 2010; 64: 523-31.
⑥幸野 健:皮膚科フロンティア  2007; 194: 70-3.
 
 
(院長)
 
cherry慢性じん麻疹の原因は、ほとんど不明です。多くの患者で自己抗体(抗FcεRI抗体、抗甲状腺抗体)が検出されており、自己免疫疾患のような病態が想定されてきています。
 
apple昨日は、患者さんが、日頃の治療のお礼と職員の慰労のためにお琴を弾いてくださることになり、その演奏会を当院外来で行いました。
 
Img_3024_7
 
にわかお琴教室も行われました。

カテゴリ

カウンター

  • アクセスカウンター