アドヒアランス(adherence)と2週間処方
当院の治療(外用剤)の極意の1つは、最大2週間処方です。1ヶ月以上の長期処方は絶対にしません。
なぜか? それには、深いわけがあるんですよ
下図は、乾癬患者さんの治療状況のグラフです①。縦軸は患者さんがどのくらい医師の指示にしたがってぬり薬をぬったか(adherence)です。1.0は、100%指示に従ったということです。
グラフの患者さんの申告は、患者さんが指示に従ったかどうかの自己申告です。グラフからは、患者さんの申告ではほぼ9割塗っています。
でも、意地の悪いことに内緒でぬり薬の容器にカウンターがついているのですよ。何月何日に何回ふたを開けたかわかるように。それが、実際の状況のグラフです。
グラフからわかるように、治療数日でガクッとadherenceが落ちます、さらに2週間後にガクッと落ちます
1ヶ月もすると、申告では9割は塗っていることになっているんですが、実際は6割程度しか塗っていないことがわかります
赤いマルのところで急にadherenceがよくなっているのは、「白衣の影響」といって医師を受診したときだけadherenceがよくなるのです。
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最近読んだにきび(ニキビ)の外用治療の論文(下グラフ)なんでが、これと非常によく似た内容が書いてありました②。
縦軸は、adherenceで同じです。2つのグループに分けています。1つは、internet-based survey グループ、もう1つはコントロール。前者は、週1回インターネットで治療状況を質問して回答してくれれば賞品を与えるグループです。
さすがに賞品がかかってくると、adherenceがよいですね〜。縦軸の100%を超えているのは、必要以上に塗ったということですね
でも、実際の外来で賞品を与えるなんてのは無理でしょうね
問題なのは、コントロールグループです。2週間もすると5割もぬってくれません(緑の矢印)。4週間もすると、3割を切りますね
6週目に「白衣の影響」で一時的にadherenceが上がっています
治療効果は断然、internet-based survey グループがよかったそうです
要するに、「塗らない塗り薬は、効果がない」ということです。
Adherenceを保って治療効果をあげるためには、2週間が限界なのですね。
今回は、ちょっと難しい内容になりましたね。
(参考文献)
①Journal of the Japan Organization of Clinical Dermatologists. 2010; 27(1):14-26.
②Arch Dermatol. 2011;147(10):1223-1224.
(院長)
*処方量に関しては、他にも類型区分や新薬規制など保険上の制約もあります。
*2週間で受診は、じゃまくさいので一見評判がわるいのですが、治療効果があがるので結局はadherenceがさらに上がっていくようです。
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