カテゴリ「食物アレルギー」の7件の記事 Feed

2015年4月 9日 (木)

NHKスペシャル「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」

本日は、足羽川沿いの桜cherryblossomを見に出かけました。さすが桜名所100選に選ばれるだけあってすごく綺麗でしたhappy01ただ、ちょっと寒かったですけどねcatface
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ところで先日、たまたまNHKスペシャル 「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」をみました。みなさんはご覧になられたでしょうか?
 
この中で、ピーナッツアレルギーの話題をやっていましたね。
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特に重要な点は、今年2月に発表された「The LEAP study 」の結果を報告していたところです。この結果次第でアレルギー予防の根本が変わる当ブログで3年ほど前に取り上げた話題ですねhappy01
 
 
640人の乳児が参加して、ピーナッツを週3回以上食べさせたグループピーナッツを徹底的に避けた(除去食)グループにわけて生後60ヶ月まで追跡した最もエビデンスレベルの高い調査(二重盲検ランダム化比較試験)です。
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(NHKスペシャル 「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」より)
 
結果は(私にとっては)予想通り、ピーナッツを離乳食の早い段階でたくさん食べたほうが、除去食をしたグループより優位にピーナッツアレルギーの発症を抑えたという結果(3.2%対17.3%)です。
 
要するに、食物アレルギーが発症する前の早い段階で、積極的に食物(この場合はピーナッツ)を摂取することで、食物アレルギーが起こりにくくなるということです。
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 (NHKスペシャル 「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」より)
 
番組に出演していた医師も、「食物アレルギーが発症する前には、(除去食はせずに)なんでも食べさせた方がよさそうですね」といっていましたwinkdanger
 
 
このNHKスペシャルでは、もう1つ大切なことを述べていました。それは、ピーナッツオイルを乳児湿疹のスキンケアに使ったがために、重篤なピーナッツアレルギーを起こしてしまったある患者の話です。
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塗っていたピーナッツのタンパク質が、湿疹という炎症した(バリアが壊れた)皮膚から体内に入り、ピーナッツアレルギーが引き起こされたということです。
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(NHKスペシャル 「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」より)
 
前述の出演医師も、「乳児湿疹を早く治してスキンケアを行い、皮膚バリアを強化して食物タンパクが皮膚から侵入しないようにすることが大切である」と述べていました。

乳児アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア障害をもつ乳児湿疹の重症型です。何故当院では、プロアクィブ療法で肌の良い状態を保たせているのか、その理由がよくわかると思います。

 
以上まとめると、『食物アレルギーを予防するためには、発症する前にむしろ積極的に食物を摂取し、除去食はダメ、アトピーなどの湿疹は早く治して皮膚から食物タンパクなどのアレルゲンが侵入しないようにする』ということですね。
 
(院長)
 
danger番組内でも強調されていましたが、すでに食物アレルギーを発症されている方が、勝手に除去食を解除するのは大変危険です。
 
*以上の話は、Lack G先生(本文の最後の写真の方)の二重アレルゲン暴露仮説に基づくもので、アレルゲン(食物タンパクなど)は、皮膚から入るとアレルギーを引き起こし、口(消化管)から入るとアレルギーが起こりにくくなるというものです。LEAP studyの結果から、仮説ではなくなりつつあります。
 
 

2015年3月11日 (水)

アトピー性皮膚炎の原因と予防

当院には、毎日多勢のアトピー性皮膚炎(以下アトピー)のお子さんが受診されますhappy01
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受診時に、お母さんからの質問で多いのは、「うちの子のアトピーは、何の食べ物が原因でしょうか?」、「卵などの除去食はしなくてよいのでしょうか?」などですcoldsweats01
 
ずばり回答すると、アトピーの原因は食物アレルギーではありません。ですから、除去食は基本的に(というかほとんど)行う必要はありません。しかし、アトピーを放置しておくと、経皮膚感作(過去のブログ参照)により、いずれ食物アレルギー喘息などが併発してきますshock[1][2][3][4]
 
では、アトピーの原因は一体何なのでしょうか?
 
当ブログでも再三述べているように、皮膚のバリア機能異常(簡単に言えば乾燥肌)が、発症に大きく関わっているようです[2][4][5]
 
実際に、アトピー発症のハイリスク(両親にアトピーがあるなど)の赤ちゃんを生後まもなく保湿治療をすることで、バリア機能を改善させてアトピーの発症を抑えたというエビデンスレベルの高い報告が最近なされました(下グラフ)[4]
 
(アトピー性皮膚炎の累積発症率を示すカプランマイヤー曲線)
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このグラフが意味するところは、保湿治療をした子の方(上の線)が、しなかったコントロール群(下の線)に比べてアトピーの発症率を3割も減らせたというものです。
 
しかし、この著者も述べていることですが、一旦発症したアトピーは、保湿治療のみでは改善しません。
 
保湿剤以外の外用剤(ステロイド軟膏やプロトピック軟膏など)も使用して積極的に治すことが必要です。当院ではプロアクティブ療法ですねwink
 
これにより、食物アレルギーや喘息などの発症を予防するだけでなく[1][4]すでに発症しているこれらの疾患の症状も改善することが知られてきていますhappy01
 
以上のことは、過去のアトピー性皮膚炎のブログに詳しく書いていますので参照してください。
 
(参考文献)
[1]Lack G:J Allergy Clin Immunol. 2008;121:1331-36.
[2]秋山真志: 日医雑誌 2010;138:2536-7.
[3]Dharmage SC, et al.: Allergy. 2014;69:17–27.
[4]Horimukai K,et al.:J Allergy Clin Immunol.2014;134:824-30.
[5]Simpson EL, et al.: J Am Acad Dermatol 2010;63:587-93.
 
(院長)
 
banana以前、[4]の論文の責任著者である大矢幸弘先生(国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科医長)の講演を聴いたときに、除去食はほとんどしない、アトピー症状のコントロールが悪いのは単に外用ができていないからだと断言されていましたね。同感です。
 
cherry[4]の論文では、保湿剤として2e(ドゥーエ)を使用していたようですが、責任著者の大矢先生は、ワセリンでも同様の結果が出るであろうと述べておられます。    
 
apple最近オリーブオイルや馬油を赤ちゃんの保湿剤として使用している方が増えています。経皮感作の起こりやすい赤ちゃんに、これら動植物性のオイルを使用することはおすすめしません。
 
 

2014年11月 1日 (土)

アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係

本日より11月になりました。めっきり寒くなりましたねdespair
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寒くなると、乾燥肌の患者さんが急増してきます。それにつれてアトピー性皮膚炎(以下アトピー)の患者さんも悪化してくる時期ですshock
 
プロアクティブ療法中の患者さんは、悪化時は外用頻度を高めて早めに受診してください。例えば、週1−2回外用の患者さんは、週2−3回の外用に頻度をあげるということです。
 
ところで、最近よくきかれる質問があります。
 
『アトピーは、なにか食べ物が原因ではないのですか? 食事制限はしなくてよいのですか?』というものです。
 
アトピー性皮膚炎は、長い間単なるアレルギー性疾患と考えられていたために、次の流れが信じられてきました。
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ですので、アレルゲンの除去すなわち原因食物を除去すればアトピーは予防できる、あるいは治ると信じられてきましたwobbly
 

長年の研究から、食物制限はアトピーの予防効果も治癒させる効果もないことがわかってきました[1][2][3]。

さらに多くの研究から、食物アレルギーアトピーの関係は以下の図のようになることがわかってきています[4][5]。
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すなわち、アトピーを放置する(外用治療をしない)と食物アレルギーを併発するというのが正解です。
 
よって、アトピー発症早期からの外用(ステロイド&保湿剤)治療がアレルギー感作を防ぎ、食物アレルギーを予防あるいは改善させるのですまた、外用治療はアトピーそのものを予防する効果があることもわかって来ています[6]
 
さらに、安易な食物制限はかえって食物アレルギーを悪化させます。
 
下グラフは有名な臨床研究ですが、英国の子供はピーナッツを厳しく制限しているのにピーナッツアレルギーが非常に多いのです。イスラエルの子供は、ピーナッツをよく食べているのにピーナッツアレルギーが非常に少ない[7]
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どうやら、アレルゲン(この場合はピーナッツ)の経口摂取(食べること)は、アレルギーを抑制するようです[4][7]。なんでもよく食べた方が良いようですねgood
  
外用治療をおろそかにして、食物制限に精を出している方をよくみかけますが、如何に間違った方向で努力しているかがわかるかと思いますcoldsweats01
  
(参考文献)
[1] Clin Exp Allergy 2004; 34:1220-1225 (Study of prevention of allergy in children of Europe)
[2] Pediatr Allergy immnol 2002; 13:32-7 (National asthma campaign manchester asthma and allergy study)
[3] Pediatrics 2008; 122(1): 115-112 
[4] N Engl J Med 2003; 348:977-85
[5] J Allergy Clin Immunol 2008; 121:1331-6
[6] J Am Acad Dermatol 2010; 63:587-93
[7] J Allergy Clin Immunol 2008; 122:984-91
 
(院長)
  
*アトピーを放置すると、生後1年で食物アレルギーを起こす確率は、アトピーの無い子供にくらべて5倍以上という報告もあります。
*すでに食物アレルギーになってしまった方は、その重症度に応じて制限をする必要があります。しかし、それでアトピーが治るわけではありません。
 

2013年6月28日 (金)

小児アトピー性皮膚炎の講演会

昨日は、小児科と皮膚科の合同の講演会に行ってきました。
 
講演は、福井医大小児科 大嶋教授による小児アトピー性皮膚炎の治療についてでした。
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内容は、本ブログでもよく言っている、プロアクティブ治療の有効性食物アレルゲンの検査や食餌制限より外用治療を優先すること、早期の保湿治療の開始によるアトピー性皮膚炎の予防などなどでした。
 
小児科の講演はあまり聞かないので、興味深ったですねhappy01
 
治療開始からいきなり食物アレルギーの血液検査をして食餌制限をするようなことは厳に慎むようにおっしゃっていましたね。むやみに食餌制限をして食物アレルギーのアウトグロー(自然治癒)を阻害しないようにとのことでした。
 
それと、プロアクティブ療法で食物アレルゲンのIgEが下がるだけでなく、気管支過敏性が低下して喘息などがよくなるなどを述べられていました。
 
これについては、当院でも実感していました。プロアクティブ療法中の小児は、喘息がよくなり、風邪も引かなくなったとよく母親にいわれます。やはりそうなんですねhappy02
 
外来が多くて疲れていたので行こうか迷っていたのですが、行ってよかったです。勉強になりましたhappy01
 
(院長)
 

2012年7月28日 (土)

ピーナッツアレルギーの話題2

前回の話題は、ピーナッツアレルギー(Peanuts allergy: PA)の疫学調査から、食事制限食物アレルギー発症のリスクを高めるかもしれないというお話でしたthink


今日の話題は、落花生油(ピーナッツオイル)についてです。
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落花生油(ピーナッツオイル)のクリームを体にぬっている子供にPAが多いという報告です①confident

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これは、食物アレルギーは皮膚から入る食物(アレルゲン)が原因で発症する可能性が高いことを示しています。


くしくもこれを「お茶石けん」が証明したのは記憶に新しいことと思いますshockshock


お茶石けんに含まれていた加水分解小麦の粘膜(目や鼻)や皮膚からの侵入が、重篤な小麦アレルギーを引き起こしてしまった事件ですねweep


これらのことから近年注目を浴びているのが、Lack G先生の二重アレルゲン曝露仮説 です(下図)②happy01

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食物アレルゲンの経口摂取(oral exposure:経口暴露)は、食物アレルギーの発症を抑制(tolerance)し、皮膚からの食物の侵入(cutaneous exposure:皮膚暴露)は食物アレルギー(allergy)を引き起こすという考えですflair


またこれは、皮膚からの食べ物の侵入を防げば、食物アレルギーの発症も防げる可能性を示唆しています。happy02② 


この侵入経路でもっとも注目されているのが乳児湿疹や乳児アトピー性皮膚炎(以下アトピー)なんですね①②confident


これは、外用治療を全くしていないアトピーの小児のお肌ですが、もう皮膚バリアがぼろぼろですねcoldsweats02 この肌じゃ、食べ物(例えばビスケットの屑など)やほこりなどアレルゲンがどんどん皮膚の中に入って行きそうですねweep

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実際に、乳児期早期から適切な外用治療(ステロイド軟膏や保湿剤などのぬり薬)で皮膚のバリアを改善させると、食物(アレルゲン)の皮膚からの侵入が少なくなり食物アレルギー発症を回避させる可能性が報告されてきています②③④


さらに外用治療でアトピーだけでなく食物アレルギーそのものも改善し、特異的IgEも低下することが報告されていますhappy02


以上のことから、食物アレルギーのもっとも有効かつ安全な予防法は、乳児期早期からの外用治療であるようですwink


外用治療が不十分な乳児湿疹乳児アトピーの子を持つ親御さんが、すぐに食事制限をしたがるのを制して、まずぬり薬ですと外来で強く強調しているのは以上の理由からなんですwink


(参考文献)
①Lack G et al.: N Engl J Med 2003; 348:977-85.
②Lack G : J Allergy Clin Immunol 2008; 121: 1331-6. 
③Simpson EL, et al.: J Am Acad Dermatol 2010;63:587-93.
④片岡葉子: 第111回 日本皮膚科学会総会 教育講演34

(院長)


danger今回の記事とは関係ありませんが、夏休みでもあり現在レーザーおよび手術(ほくろやシミとり、良性腫瘍の切除など)の予約が2ヶ月先までいっぱいですcoldsweats01 お急ぎでなければ秋以降に予約が減ってきますのでその時期の受診をお勧めしますhappy01 お急ぎの方は、私が信頼をおいている形成外科医あるいは皮膚科医に紹介させていただきますhappy02 電話でのご相談はお受けしておりませんのでご遠慮くださいwink


〠918-8105 福井県福井市木田3丁目2605 
にしむら皮フ科クリニックのホームページ

2012年7月21日 (土)

ピーナッツアレルギーの話題

食物アレルギーのなかでもピーナッツアレルギー(Peanuts allergy: PA)は欧米ではもっとも深刻ですthink

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なぜなら、アナフィラキシーなどの重篤な症状を引き起こす上に患者数が年々増えてきているためですshock


それに、欧米人はピーナッツバター大好きですからね〜wink ちなみに当院師長の大好物heart04でもあります。

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このPAの疫学調査から食物アレルギーの概念が大きく変わろうとしていますcoldsweats02


今回のお話は、イスラエルと英国の小児(ユダヤ人)に対するPAの疫学調査についてです。


「離乳期からピーナッツ製品を普通に摂取しているイスラエルの小児に比べ、ピーナッツを摂取制限している英国の小児のほうがピーナッツアレルギーが10倍多い。」という驚くべき調査結果がでています(下図)coldsweats02②③

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近年、妊娠や授乳期間中の食事制限は、食物アレルギーの予防には効果がないことがわかってきていますが④⑤⑥、


今回の調査結果は、予防としての食事制限はむしろ害になる可能性を示唆していますshock


この真偽をはっきりさせるために、数年前からある大規模臨床試験(The LEAP Study: learning early about peanut allergyが開始されています。


離乳期から3才までピーナッツを食べるグループと食べないグループに分けて、PAの発症に差がでるかを調査しています。


来年2013年にその結果がでますhappy02 この結果次第では食物アレルギーの指導が大きく変わるかもしれませんねwink
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(参考文献)
①Sicherer SH: J Allergy Clin Immunol 2010; 125: 1322‐6.
②Du Toit G et al.: J Allergy Clin Immunol 2008; 122: 984‐91.
③Gideon Lack: How does food allergy develop?
④Fox AT et al.: J Allergy Clin Immunol 2009; 123: 417‐23.
⑤Gideon Lack et al.: N Engl J Med 2003; 348:977-85.
⑥Verhasselt V: Mucosal Immunology 2010;25:326–33.


(院長)

tulip現在重症の食物アレルギーを持っている方は、食事制限が必要です。

apple食事制限は、緊急避難的な手段としての意味合いしかありません。これで、アトピーや食物アレルギーが治るわけではないのです。むしろ食物アレルギーの発症を増大させているかもしれないというのが今回のお話でした。ですから、重症でもない乳児湿疹や血液検査の結果だけで食事制限をはじめることは厳に慎まなくていけません。

danger今回の記事とは関係ありませんが、夏休みでもあり現在レーザーおよび手術(ほくろやシミとり、良性腫瘍の切除など)の予約が2ヶ月先までいっぱいですcoldsweats01 お急ぎでなければ秋以降に予約が減ってきますのでその時期の受診をお勧めしますhappy01 お急ぎの方は、私が信頼をおいている形成外科医あるいは皮膚科医に紹介させていただきますhappy02。電話でのご相談はお受けしておりませんのでご遠慮くださいwink


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2012年6月26日 (火)

乳児アトピー性皮膚炎の治療目的shine

乳児のアトピー性皮膚炎(以下アトピー)の治療で、いつも困惑することがありますbearing

 

「数日で症状が良くなったので、ぬり薬は勝手に止めました。」coldsweats01と母親から告げられることです。

 

ここには、大きな誤解があるのですweep

 

保湿剤やステロイド軟膏などの外用治療の目的は、今ある症状を無くすことだけではないのですconfident

 

cherry目的の1つは、アトピーの発症および重症化の予防です。①②③

これについては、以前当ブログ「アトピーの発症は予防できる。」でも説明していますwink

 

下図の右側のように、皮膚バリアー障害フィラグリン遺伝子異常など)を有する子供は、どんどん皮膚からアレルゲンが入っていきますshock①②④ 

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赤ちゃんの免疫細胞は、皮膚から入ってくるビスケット(小麦や卵)やピーナッツなどの屑やハウスダストなどの埃(アレルゲン)にさらされ続け炎症(免疫反応→感作成立)を絶えず起こします(上図の右側)shock③④

 

ラット(ねずみ)を使った実験では、この炎症が何度も起こると、徐々にアトピーの状態に移行していくことが知られていますshock

 

継続した外用治療によって皮膚のバリアーを改善維持させてこの炎症を抑えることは、アトピーの発症を予防し、その後の喘息などのアトピーマーチを回避することになるのです(上図の左側)happy01①③

 

また、発症してしまったアトピーについても、その重症化を防ぎ、大部分のアトピーの子供を治癒に導くことも分かってきています②

 

よって、治療をしなくても皮膚症状がでなくなる時期(*)まで外用治療は継続する必要があるのですconfident

 

banana2つ目の目的は、食物アレルギー発症の回避です。①②⑤

どうやら食物アレルギー(food allergy)は、皮膚からのアレルゲン侵入(cutaneous exposure)によって起こり、口からのアレルゲンの摂取(oral exposure)は、むしろアレルギーを抑える働き(免疫寛容、tolerance)があるようです(下図)⑤

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(Lack G:The Journal of Allergy and Clinical Immunology 2008;121: 1331-1336.より引用)

 

よって、継続的な外用治療で皮膚からのアレルゲン侵入を極力抑える必要があるのですconfident

 

外用治療をしっかり行うと、食物アレルギー自体も改善し、卵や小麦などの特異的IgE抗体も低下していくことが分かってきています。②

 

口から入る食物アレルゲンは、むしろ食物アレルギーを抑える(治す)働き(tolerance)がありますwink⑤⑥

 

乳児アトピーの子を持つ母親が、授乳中のため食餌制限をしてるのを時折見かけますが、むしろ免疫寛容tolerance)という点ではマイナスでしょうcoldsweats01

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(Verhasselt V:Mucosal Immunology 2010;25: 326–333より引用)

 

今年の日本皮膚科学会総会でも、アトピー治療で有名な演者が「どうやら、アトピー治療における食餌制限は間違いだったようです。」と述べられたのは感慨でしたhappy02 

 

最後に、われわれの乳児アトピー治療における目的は、現在の症状を治すことはもちろん、アトピーの発症を予防することや、発症したアトピーを重症化をさせずに寛解・治癒に持ち込むこと、そして後に起こる食物アレルギーや喘息などのアトピーマーチを回避することにあるのですconfident

 

乳児アトピーと大人のアトピーとでは、治療目的が異なるのですねconfident

 

乳児アトピーの治療経過は、6〜8ヶ月が最も症状が強く、その後改善して行きます。1才くらいには治癒する子供も見られます。2才くらいには、冬に悪化する程度になり、3才くらいには多くの子供が寛解治癒していきます②
(乳児期早期より継続的に治療した方の経過です。無治療自然経過ではありません)

 

(参考文献)
①Simpson EL, et al.: J Am Acad Dermatol 2010;63:587-93.
②片岡葉子: 第111回 日本皮膚科学会総会 教育講演34
③秋山真志: 日医雑誌 2010;138:2536-7.
④Komatsu N, et al.: Br J Dermatol 2005;153:274- 81.
⑤Lack G: The Journal of Allergy and Clinical Immunology 2008;121:1331-36.
⑥Verhasselt V: Mucosal Immunology 2010;25:326–33.

(院長)

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