今回は、専門医向けのちょっとだけ難しい話題です

ここ数日、指先に下写真のような膨らみ(→)ができたという患者さんが何人かこられました。
これは、指趾粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)あるいは単に指趾ガングリオンともいいます。
指先に粘液がたまって起こります(*)。
医師の間でも治療は厄介なものと思われていますが、意外に簡単に治療できるケースもあります

まず診断です。
すごく簡単な方法は、下から懐中電灯

をあててみると腫瘍を光が透過します。これを
Flash-Powered Transilluminationといいます①
器械があれば、エコー検査でもよいと思います。巨細胞腫など鑑別を要するものが結構ありますからね。
治療なんですけど、放置というのも1つの手ですね。 患者さんが納得されれば・・・

でも、そればかりではちょっとさみしいですよね

有効な方法の1つは、中身(粘液)を針で突いて出し(絶対に自分でしないでください

)、
冷凍療法することですね。
これは、内部を炎症で癒着させるためなんです。綿棒でするより
spray-freezingの方が、痛みがすくなく成績もいい感じですね

中身を抜いて(少しだけ残して)冷凍しないと、
痛すぎて患者さんから苦情がきますので要注意
です。
再発することはありますが、気楽に行える治療ですね

これでもダメなら手術ということになります。手指に関していうと実は簡単です

下写真のようにガングリオン周囲にフラップ(皮弁)を描いてめくり、戻すだけです(下写真)②
(上写真:左から、術前、作図、フラップ作成、縫合、術後)
嚢腫(cyst)は必ずしも取る必要はありません。めくって戻すだけ! これだけです。
再発率8%と報告されています②
指趾ガングリオンを昔はよく手術しました。この方法結構よかったですよ

先日(10/17)、
福井赤十字病院のカンファレンスでも
ガングリオンの治療が話題に上りました。そのとき私がしゃべった内容をブログにしてみました

*指趾粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)の粘液の由来により、関節液のもれでおこるganglion typeと、線維芽細胞からのヒアルロン酸過剰産生によるmyxomatous typeの2つに分類されます③
(参考文献)
① Calorego C, et al : Arch Dermatol 2012; 148(5) : 1-1.
② Clliford L : Arch Dermatol 2005; 141(12) : 1560-4.
③ Shimizu’s Textbook of Dermatology P383.
(院長)

以上の手術は、足趾では再発率が高いようです。この方法は、指ではjoint fluid leakageを処理する必要がないということです。手術法は色々ありますので、これがベストということではありません。この方法でも再発の可能性はあり、患者さんに十分説明する必要があります。

液体窒素療法はうまくいくまで2−3週間おきに1〜3回程度行います。
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