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2020年1月 3日 (金)

エコー検査で判断する粉瘤腫の治療

 
粉瘤腫(ふんりゅうしゅ、アテローマ)は、
 
下図のように開口部から皮下に広がる袋状の腫瘍です。
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診断と治療は簡単そうですが、結構奥が深いんですwink
 
粉瘤腫を肉眼所見のみに頼って手術を開始するのは危険です。
 
最近も、他院で手術予定だった患者さんが、
 
エコー検査(以下エコー)で嚢腫性ざ瘡(にきびの一種)だったことがありましたshock
 
これ、よく間違われるんですよねーcoldsweats01 
 
よってエコー(下写真)は必須でしょう。
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検査所見の詳細は、過去のブログを参照してください:粉瘤腫の超音波検査
 
上写真の患者さんのような癒着のない綺麗な袋(嚢腫)なら、
 
くり抜き(へそ抜き)術で簡単に手術ができます(下写真)。
  
この方法は、開口部をφ3-4mmに広げて、そこから中の袋を押し出す手術です(下写真 a-c)。
 
手術痕も、にきび痕程度のものにできます(下写真 d)good
 
この写真 dの傷も、1年もするとさらに小さくなってほとんど分からなくなりますhappy02
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(皮膚科基本手技・小手術ハンドブックより引用) 
  
しかし、すぐに切除できない場合もありますwobbly
 
下写真のケースでは、下部に少し赤い所()がありますね。
 
エコーで見ると袋が大きく破れていました(点線部分)shock
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こうなると、くり抜き術は難しい。
 
大きく切除することは可能ですが、大きな傷が残ります。
 
女性の首ですからね。
 
こういった場合は、小さく切開して中身を出してから、
 
後日切除する方が、小さな傷口で済みますgood 
 
その時は、開口部(→)で切開することが肝要です。
 
下写真のケースの場合は、矢印の所が開口部です。
 
右写真のエコーで確認できます()。その下に本体がいます。
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よく分かっていない医師だと、結構赤く腫れているところを切っちゃうんですよねcoldsweats01

そうすると後で手術が面倒になります。

さらに、粉瘤腫だと思ってエコーをしたら肉腫(ガンの一種)だったことが何度かありましたshockshock
 
だから粉瘤腫だと思っても、結構侮れないのですよthink
 
粉瘤腫かなぁ?と思ったら受診してください。
 
エコーを使って的確に診断し、適切な治療を選択をしますgood
 
(院長)
 
*しばらく講演もないので、こういったcommon diseaseのお話をして行くつもりです。
 
*本文の手術写真は、私の師匠の立花隆夫先生の手技です。
 

2018年2月20日 (火)

皮下のできものに御用心

当院では、皮下腫瘍(皮膚の下のできもの)の検査に新型エコーVenue(ベニュー)50を使用しています。
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皮膚科でエコー検査をしているところはあまり見かけないと思いますが、視診や触診だけで皮下腫瘍を鑑別診断するのはかなり難しいと思いますwobbly
 
最近行ったエコー検査の中で、興味深い症例を供覧します。
 
1)最初の症例は、腋窩皮下に1cm程のしこりがありエコー検査をした患者さんです。
 
皮下に不整形の低エコー像を認め、矢印のように皮下脂肪織に伸びる蛸足のような所見があります。
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こういった所見は、間葉系腫瘍のあまり良くないものに多いですね。組織の免疫染色の結果は、CD34陽性の隆起性皮膚線維肉腫(いわゆる骨肉腫)でした。
 
悪性ですので、拡大切除術となります。
 
 
2)次の症例は、足底の圧痛を伴う皮下腫瘤で受診された患者さんです。
 
皮下に楕円形の低エコー像を認めました。またカラードプラで、腫瘍の真ん中に動脈性の赤い信号も確認できました(矢印)。 
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真ん中の赤い信号部分が血管腔と考えると、血管の平滑筋が腫瘍化した血管平滑筋腫がもっとも考えられます。
  
良性ですが、もう既に歩行時痛があり、後に痛みが強くなる可能性を考慮して切除となりました。
 
切除組織の病理検査の結果は、予想通り血管平滑筋腫でした。
 
  
3)次の症例は、右母趾の爪を上から押さえると痛みが生じるため受診された患者さんです。まだ爪甲には変化はありませんでした。
 
エコー検査を行うと、腫瘍は定かではありませんが爪下に豊富な血流シグナルを認めました(矢印)。
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これは、グロームス腫瘍の初期の像と思われます。いずれ爪の変化を伴い、自発痛が強くなれば手術となります。
 
グロームス腫瘍の過去のブログ:グロームス腫瘍
 
 
4)最後の症例は、ふくらはぎの皮下に腫瘤が触れるため受診された患者さんです。エコー検査で皮下に嚢腫を認めました(左写真)。
 
粉瘤腫かと思いきや、良く調べてみると何やら別の場所に通ずる管のようなものがありました(矢印)。
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この管は、膝裏の関節嚢腫まで続いていました。いわゆるベーカー嚢腫がふくらはぎにまでのびた症例でした。
 
粉瘤腫として手術をしていたらえらいことになっていましたねshock治療の必要はなく経過観察としました。
 
以上のように、視診や触診だけでは皮下腫瘍の鑑別はできません。エコー検査は必須の検査です。
 
皮下に出来ものができて心配な方は、お早めに受診して下さいhappy01
 
(院長)
 

2017年11月24日 (金)

粉瘤腫(ふんりゅうしゅ)の超音波検査

粉瘤腫(アテローム)は、皮膚の下の袋状の構造物(嚢腫)で、中に垢(角質)が溜まってくる腫瘍です。表皮嚢腫ともいいます。
 
皮膚科診療の中では、最も頻回に遭遇する良性の皮下腫瘍です。
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診断には、超音波検査(以下エコー)が最も役立ちますhappy02というか、エコーがなくては正しい診断も治療もできません。
 
当院では、最新型のエコーVenue50を使用して診断をしています。
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 (写真はGEのホームページより)
 
典型的なエコー所見は、下写真のように皮膚との接触部位(dermal attachment:⇧⇧))を有し、底面後方エコーの増強()および側方エコーと呼ばれる低エコー領域(⇧)を両端に認めるなどです。
 
腫瘍内部は不均一な軽度高エコーを示すことが多く、dermal attachmentのところに開口部(outlet or punctum)が認められれば、まず粉瘤腫で間違いありません。
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このような炎症を起こしていない粉瘤腫は、くりぬき(へそぬき)術が術創も小さくて良い適応になります。
 
くりぬき術の過去のブログ:http://clinic-n.mitelog.jp/blog/cat7571583/
 
下写真の患者さんは6cm以上の腫瘍でしたが、くり抜き術で4mmのキズ(創部)から腫瘍(嚢腫)を取り出しましたhappy02この程度の傷口だと数ヶ月後にはほとんどわからなくなりますねwink
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この粉瘤腫が、真っ赤に腫れて炎症を起こしたものを炎症性粉瘤腫(下写真)と言います。
 
エコー像では、本来の腫瘍部位(⇧)を飛び越えて、膿が貯留して拡大し、境界が不鮮明になっています(⇧⇧)。この部分が破れたんですねcoldsweats01
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下写真の患者さんもかなり腫れています。エコーでは、嚢腫が一部変形して不鮮明になっています(⇧)。その周辺では、内容物が漏れて炎症を起こし高エコー域が拡大しています(⇧⇧)。
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以上のように、炎症性粉瘤腫は細菌感染ではなく、皮内に漏れた内容物による炎症です。
 
すでに袋は破けており、後に癒着も起こしてくるため、くりぬき術はできません。感染ではないので抗生剤の内服はほとんど効果がありませんcrying
 
この内容物が漏れた箇所に、極少量の抗炎症剤secretを的確に注入すると、たちどころに炎症が治りますgood
 
 
さらに粉瘤腫は、腫瘍内部に血流を認めません。下写真は、左右で異なる患者さんですが、両者とも病変部の血流が豊富です。この患者さん達のしこりは、嚢腫性ざ瘡(にきび)でした。
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(カラードプラ)
  
顔面の嚢腫性ざ瘡は、よく粉瘤腫と間違われるので注意が必要ですcoldsweats01ですからエコー検査は必須ですね。特に顔面では。
 
粉瘤腫だけではなく、あらゆる皮膚のしこりをエコーで診断しています。
 
最近皮膚のしこりができて気になる方は、是非受診してくださいhappy01
  
(院長)
 

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