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2023年11月21日 (火)

小児アトピー性皮膚炎のデュピクセント治療

成人のアトピー性皮膚炎(以下アトピー)の治療は、
 
デュピクセント(デュピルマブ)の併用による
 
新プロアクティブ療法(下図)によって、
 
どんな重症アトピーでも
 
寛解(症状ゼロ)に持ち込めるようになってきましたgood
 
それも極めて安全にですhappy02
 
さらに、デュピクセント中止後も
 
3年以上寛解を維持している方が大勢いますhappy02
Photo
以下のブログでも詳しく述べています。
 
小児の場合は、プロアクティブ療法単独
 
寛解になる方がほどんですgood
 
しかし1割以下ですが、寛解に持ち込めない
 
難治性アトピーの方もおられますcrying
 
こういった難治例に、今年9月より
 
デュピクセントの年齢制限が解除され、
 
生後6ヶ月より使用できるようになりましたhappy02
 
当院でもすでに、10歳以下の小児5人が、
 
デュピクセント治療を開始しています。
 
これでもう、アトピーで寛解できない症例は
 
ほぼゼロですhappy01
 
ここ10年のアトピー性皮膚炎治療の進歩は凄まじいwink
 
(院長)
 
*デュピクセントは、真面目に定期的に通院している方のみ適応です。ガイドラインでは、その期間は6ヶ月以上とされています。不定期な通院や初診の方は、処方できません。まずは、真面目に通院してください。
 

2019年12月11日 (水)

アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法の秘訣?

下写真の患者さんは、アトピー性皮膚炎プロアクティブ療法中です。
 
週2回の外用をしています。皮疹は全くありません。
Img_3032_2
 
一体どこに外用剤を塗っているのでしょうか? わかります?
 
ちなみに、外用を止めると1週間位であちこちに皮疹が出てきますshock 
 
先日、ある学会のアトピー性皮膚炎治療のセッションで、
 
御高名な大学教授が、講演の中で次のように述べていました。
 
プロアクティブ療法の秘訣は、外用剤を皮疹のないところも含めてほぼ全身に塗るんです』
 
あ、当たり前やんcoldsweats02
 
でも当たり前ではないらしい。そうしていない医師が多いらしいcoldsweats02
 
一見正常に見えるsubclinicalな炎症を抑える治療がプロアクティブ療法なのですから。
 
見える皮疹だけ塗ってたらダメでしょうng
 
それに、今見えている皮疹も消えたり出たり、移動したりしますからね。
 
特に小児は。
 
そして寛解導入後に、外用剤のレベル、1日量、外用頻度を適切に判断して漸減して行くのですsecret
 
ここは、皮膚科医の腕の見せ所ですwink
  
以上の徹底した管理がプロアクティブ療法なのです。
 
子供は、母親がしっかり管理してくれるので、この治療がほぼ全員可能です。
 
7〜10日に1回で皮疹がなければ、保湿剤のみで経過を見ます。完全寛解ですね。
 
多くの患者さんがここに到達できますgood
  
『お母さんが見て、悪いところだけに塗って下さい』とか、
 
『薬が無くなって調子が悪くなったら来て下さい』はダメなのですshock
 
それは、プロアクティブ療法ではありません。
 
(院長)
 
*適切なプロアクティブ療法は、アトピー性皮膚炎の予後を改善し、食物アレルギーの発症を防ぎます。
 
*以上の内容は、プロアクティブ療法を行っていない方には当てはまりません。当院では、小児は原則プロアクティブ療法を行っています。
 

2019年10月 7日 (月)

アトピー性皮膚炎に対するデュピクセント治療

先週末は、日本皮膚学会中部支部学術大会に出席してきました。
 
久しぶりに中川先生(元福井日赤皮膚科副部長)と会ったので、一緒に写真をとりました。
 
自分の発表がないので、二人ともラフな格好ですsmile
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今学会出席の主目的は、乾癬及びアトピー性皮膚炎の治療を聴講することでした。
 
大変勉強になりましたhappy02
 
特にアトピー性皮膚炎治療は、デュピクセントの登場によって大きく進歩しました。
 
当院でも31名の患者さんに投与していますが、
 
その効果は凄まじく、かつ副作用はほとんどありませんhappy02
 
この治療の目指すところは、プロアクティブ療法を補完することです。 
 
当院での治療対象は、
 
プロアクティブ療法の効果不十分な方、②プロアクティブ療法は有効であるが、完全寛解に持ち込めない方、②超重症のために早期寛解導入が必要な方、④その他
 
です。
 
そして、最終的にプロアクティブ療法単独に移行して完全寛解(薬物療法離脱)を目指しますgood
 
外用無しで、これだけでアトピー性皮膚炎をなんとかするような薬ではありません。
 
こういったお話を、今週水曜日にWEBセミナーで行いたいと思います。
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(院長)
 

2019年7月21日 (日)

アトピー性皮膚炎の新薬デュピクセントの経過報告

当院では、アトピー性皮膚炎(以下アトピー)の新薬デュピクセントの治療を今年5月より開始しました。
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現在15人の患者さんを治療しています。
 
TARCの平均が初診時2万以上の超重症で、シクロスポリンですらコントロール不良の患者さんたちです。
 
当然、外用剤や紫外線療法も歯が立ちませんshock
 
大人のアトピー患者さんの中には、このように途轍もないレベルの方がおられますweep
 
ですから、小児アトピーのうちにしっかりと治療して重症化を防ぐことが大切なんです。
 
当院では、しっかりプロアクティブ療法を行った小児で重症化していった方はいません。
 
ほとんどの方が、最終的には外用療法が必要なくなりoutgrowしていますgood
 
話を元に戻しますと、
 
デュピクセント投与前は、これらウルトラ超重症の患者さんに果たして効果があるのだろうかと大変心配しました。
 
しかし、投与して全員順調に改善していますhappy02
 
すごい威力ですhappy02しかも安全性も高いgood
 
超重症アトピーの当院職員にも投与しましたが、正常な肌が全くない状態から、今ではアトピーであることすらわからない綺麗なもちもち皮膚shineになっていますhappy02
 
コントロール不良の女性患者さんには、特にオススメですねwink
 
現在は、今まで治療法が無かった超超重症の方へ投与していますが、
 
今後はもう少し軽症の方(と言っても重症ですが)のより安全で早い寛解導入(ほとんど治ったような状態)に使用できればと考えています。
 
薬は高額ですが、色々な制度で負担金を軽減することも可能ですのでご相談ください。
 
dangerデュピクセント治療は、当院で治療を継続されている方で、この治療に適応のある方のみに限定させていただいております。
 
(院長)
 

2017年4月24日 (月)

アトピー性皮膚炎のTARCコントロール

今日は、良い天気でしたね〜sun 早く夏が来て欲しいなぁhappy01
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ところで本日は、アトピー性皮膚炎(以下アトピー)のプロアクティブ療法の経過をお話ししたいと思います。
 
今回はちょっと専門的すぎるかもsmile
 
4年前にこのブログで、アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法という題で2人の重症アトピー患者さんを紹介しました。
 
二人とも、その後も真面目に通院され、寛解状態(皮疹ほぼゼロ)をずっと維持されています。
 
血液データ(TARC, IgE)も非常に良好です。
 
症例1 10代女性 初診時のTARC(ターク)14146 Pg/ml、 IgE 12730 IU/ml ⇨現在 TARC 264 Pg/ml  IgE 2342 IU/ml
1 
 
症例2 20代男性 初診時のTARC(ターク)7755 Pg/ml、 IgE 7930 IU/ml
⇨現在 TARC 661 Pg/ml  IgE 1300 IU/ml 
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2人ともしっかり通院され、アトピー性皮膚炎克服に頑張っておられるのは嬉しい限りですhappy02
 
現在、外用は週1〜2回で、通院間隔は1ヶ月半〜2ヶ月程度です。再燃はほとんどありません。
 
両者とも高IgEが改善され、完全寛解(治癒)が期待できそうですね。現に、良好なコントロールから完全寛解に至ったケースを数多く経験していますgood
 
TARCを測定して、それを道標に治療方針を立てる。それをTARCコントロールと言います。
 
それを実践する外用療法がプロアクティブ療法なのです。
 
特に重症の患者さんにこそ行ってもらいたい治療ですねwink
 
(院長)
 
 
 
治療の具体的な方法は、過去のブログ『TARCを使用したアトピー性皮膚炎の治療』を参照してください。
 
*TARCは、正式にはタルクと読むらしいのですが、私は英語読みのタークに慣れてしまっているので。
 

2013年2月17日 (日)

アトピー性皮膚炎のプロアクティブ治療

前回のアトピー性皮膚炎(以下アトピー)のブログで、TARC(ターク)を使用したプロアクティブ治療という最新の治療法を紹介しましたhappy01
 
当院では、多くの患者さんがこの治療法でコントロールされ、完全寛解している方も大勢おられます。特に小児は、母親がきっちりと外用してくれるため治療がスムーズですねhappy02
 
ここ最近受診された現在プロアクティブ治療中の患者さんを紹介しましょうhappy01
 
下写真の患者さんは、他院でステロイド外用治療を中心に、調子の悪いときだけ外用するリアクティブ治療が行われていました。IgE 7930 IU/ml、TARC 7755 pg/mlと凄まじいですねshock
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全身色素沈着でドス黒くなっていますcrying これをステロイドの副作用と誤解している方が多いので困りますね。単にアトピーコントロール不良なだけなんですけどねcoldsweats01
 
で、治療をプロアクティブ治療に変更しました。IgE 3058 IU/ml、TARC  616 pg/mlまで下がりました。ステロイド軟膏を使用していますが、肌は白く綺麗にshineなりましたね。彼は昨日も受診され、もうこの状態を8ヶ月間維持しています。現在の目標は、IgE<1000 IU/ml、TARC<500 pg/ml。
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これだけ綺麗になれば、仕事も恋愛もばっちりですねwink プロアクティブ治療で薬物療法離脱と寛解維持の両立をめざしてくださいgood
 
次の方は、前回も紹介した方ですね。IgE 3867 IU/ml、TARC  7023 pg/ml。この方もリアクティブ治療が行われていました。
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プロアクティブ治療に変更してIgE 1250 IU/ml、TARC  859 pg/mlとなり、お肌は真っ白shineです。「ステロイド軟膏でお肌が黒くなる。」真っ赤なであることがわかりますthink
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TARC 500 pg/mlに達していないのでまだ完全寛解とはいえず、先週受診時はインフルエンザにかかって、やや痒みがぶり返しているようでしたcoldsweats01IgE<1000 IU/ml、TARC<500 pg/mlを目標に完全寛解をめざして頑張って下さいwink
 
本人の承諾が得られれば、今後もプロアクティブ治療中の他の患者さんを紹介したいと思います。
 
(院長)
 
*小児は、TRACなど測らずともほぼ全員が寛解状態になり、多くの方が完全寛解になっています。これは母親が努力してしっかりと外用してくれるためですね。みなさんまじめです。成人の方は、なかなかコンプライアンス(アドヒアランス)が保てない方が多いです。よって、定期的に受診されないので、仕方なくリアクティブ治療になっている方も大勢おられます。
 

〠918-8105 福井県福井市木田3丁目2605 
にしむら皮フ科クリニックのホームページ

2013年1月12日 (土)

TARCを使用したアトピー性皮膚炎の治療

本日は、TARC(ターク)を使ったアトピー性皮膚炎(以下アトピー)治療について解説したいと思います。通院患者さん用に書いたもので、やや難解ですがご容赦ください。
 
当院では、特に重症の成人アトピーの患者さんにTARCを使ったプロアクティブ治療を導入しています。
 
 
(1) TARCとは一体なんでしょうか?
 
TARCとは、Thymus and Activation-Regulated Chemokineの略で、アトピーの患者さんの皮膚から過剰産生されている皮膚の炎症を引き起こす物質(正確にはアトピーの炎症を引き起こすTh2細胞(リンパ球)を病変部に引き寄せるケモカイン)です。外用治療で皮膚が正常になってくると低下していきます。よって、治療効果や重症度の判定に有効です① 自分のアトピーの重症度が数値ででてくるのですhappy02
 
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(塩野義製薬ホームページより引用)
 
しかしもっとも大切なことは、治療によってTARCが十分に低下すれば目標500 pg/ml以下「症状が全くない寛解した状態にする」ことができます②happy02そして長期間この状態を維持すれば、本当に完治してしまう方もおられますgoodこの長期間の維持に導入される方法こそがプロアクティブ治療shineであり、近年その有効性が確認されてきています③
 
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(2) プロアクティブ治療の実際
 
(a) アトピーの皮膚は、炎症細胞が浸潤して各種サイトカインを放出し、あたかも火事のように炎症が起こっています(下図(a)および下写真)。この部分の表皮細胞からはTARCが放出され、さらに炎症細胞を引き寄せるという悪循環が起こっています(TARCサイクル)。
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下写真 11才男性 12/03/22 (IgE: 3867, TARC: 7023) 
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(b) 薬物治療(ステロイド軟膏やプロトピック軟膏)にて一旦症状は無くなりますが、皮膚の下には炎症細胞が残っており、薬物治療をやめるとすぐにぶり返します(下図(b)および下写真)。TARCは、まだ500pg/mlには達していません。ここでやめれば、TARCが上昇して再燃悪化してしまいます。元の木阿弥ですshockここで薬物療法をいきなり止めずに、しかし徐々に離脱をはかって行きますhappy01
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上写真と同一人物 12/12/10 (IgE: 1250, TARC: 856) 
現在症状は軽微であり、次に述べる(c)完全寛解をめざしプロアクティブ治療中
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(c) 外用のレベルを下げるか、あるいは頻度を下げながら徐々に薬物療法を離脱し、かつTARCを下げていきます。TARCが500pg/mlを切ってくると少々のことでは悪化しませんので、大胆に外用頻度を下げて行くことも可能です。週1〜2回の薬物療法まで持って行くことが当面のゴールです。これは下図 (c) の状態であり、この状態をできるかぎり維持しましょう。いつか外用がいらなくなる日までwink
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以上のように、TARCサイクルに陥らない様に、症状がないにもかかわず積極的に外用継続(しかし、徐々に薬物療法離脱)して寛解状態を維持して行く方法をプロアクティブ治療shineといいます。症状があるときだけ(あわててsweat01)外用する方法は、リアクティブ治療といいます。プロアクティブ治療の方が、結局は少ない外用量で寛解状態を長く維持できるだけでなく、長期寛解から治癒の可能性もでてきます②③happy01
 
上記のプロアクティブ治療の図は、第61回日本アレルギー学会春期学術大会 福家辰樹氏(浜松医科大学小児科)の発表より引用(一部改)。写真は当院通院中の患者さんのもの。
 
通院中の患者さんは、是非(C)の完全寛解をめざして頑張って下さいhappy01次回のアトピーに関するブログでは、実際のプロアクティブ治療中の患者さんを紹介したいと思います。
 
(参考文献)
①玉置邦彦ら:日本皮膚科学会雑誌 2006; 116: 27‐39.
②片岡葉子ら: 皮膚の科学 2012; 11(1): 2‐11.
③Schmitt J et al: Br J Dermatol. 2011; 164: 415‐28.
 
(院長)
 
TARCは、英語読みでは「ターク」ですが、これを発見した塩野義製薬からは「タルク」と呼んで下さいとのことでした。しかし、「ターク」が多数派になりつつあります。
 

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