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2013年11月30日 (土)

アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法の症例

アトピー性皮膚炎(以下アトピー)の話題は久しぶりですねhappy01
 
ここ数日プロアクティブ療法中の、かって重症アトピーであった方がドッとこられました。そのお一人に写真掲載をお願いしたら快く承諾してもらえましたので、久しぶりにこの治療法を紹介したいと思いますgood
 
この患者さん(10代女性)は、某病院で長年厳格な食事制限非ステロイド外用剤、消毒液(ヒビテン?)を皮疹に塗るなどの治療をうけていましたshockおそろしくout-of-dateな治療なんですが・・・coldsweats02福井ではたまに見かけますcoldsweats01
 
血液データは、初診時 IgE 12730 IU/ml, TARC 14146 Pg/mlという重症の状態になっていましたshock下写真は初診時です。
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治療は、もちろんプロアクティブ療法を開始しました。半年後の経過は、下写真のようにほぼ寛解して真っ白shineです。血液データは、IgE 5097 IU/ml, TARC 224 Pg/mlまで改善しました。現在、週2回の外用(塗る)治療(保湿剤とⅢ〜Ⅳ群レベルのステロイド)で、食事制限はほぼ解除されています。
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今後はプロアクティブ療法を継続して、外用頻度とレベルをさらに下げて完全寛解をめざしていく予定ですwinkまた、今回の写真掲載に快く承諾いただきましてありがとうございました。
 
他には、以前このブログで紹介した下写真の患者さんも一昨日受診されました。プロアクティブ治療ですでに1年の経過ですが、同様に症状はほとんど無く、週2回の外用で継続治療中です。TARCはほぼ正常域で推移し、IgE7930→3085→2883 IU/mlと低下してきています。
(下写真:初診時)
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下写真:治療半年後 
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プロアクティブ療法は、長期の計画的な外用治療が必要であり、従来のリアクティブ療法のように症状が出てから(あわててsweat01)外用をしはじめる治療とは全く異なる概念の治療法ですconfident症状がなくても、アトピー克服のために一定間隔で計画的に外用をし続ける必要がありますconfident
 
欧米ではすでに広く提唱されている治療法ですが、日本では最近になりようやく認知されるようになってきましたhappy01
 
よって以前は、他院を受診したら「症状がよくなっているので塗る必要がない」、あるいは「塗らない方がよい」といわれたと、プロアクティブ療法中の患者さんからの不安による問い合わせや苦情がよくありましたねdespair
 
(院長)
 
banana当院の小児アトピー成人の重症アトピーの患者さんは、基本的にプロアクティブ療法です。この治療法は、長期の定期的な通院が必要であり全ての患者さんに行っているわけではありません。
  
appleプロアクティブ療法の詳細は、当ブログの以下の記事を参照してください。
 
 
cherry以下の休診を予定しています。ご注意ください。
 
・12/14(土)第433回 日本皮膚科学会京滋地方会で発表のため全日休診です
 
・12/21(土)臨時休診
 
 

2013年2月17日 (日)

アトピー性皮膚炎のプロアクティブ治療

前回のアトピー性皮膚炎(以下アトピー)のブログで、TARC(ターク)を使用したプロアクティブ治療という最新の治療法を紹介しましたhappy01
 
当院では、多くの患者さんがこの治療法でコントロールされ、完全寛解している方も大勢おられます。特に小児は、母親がきっちりと外用してくれるため治療がスムーズですねhappy02
 
ここ最近受診された現在プロアクティブ治療中の患者さんを紹介しましょうhappy01
 
下写真の患者さんは、他院でステロイド外用治療を中心に、調子の悪いときだけ外用するリアクティブ治療が行われていました。IgE 7930 IU/ml、TARC 7755 pg/mlと凄まじいですねshock
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全身色素沈着でドス黒くなっていますcrying これをステロイドの副作用と誤解している方が多いので困りますね。単にアトピーコントロール不良なだけなんですけどねcoldsweats01
 
で、治療をプロアクティブ治療に変更しました。IgE 3058 IU/ml、TARC  616 pg/mlまで下がりました。ステロイド軟膏を使用していますが、肌は白く綺麗にshineなりましたね。彼は昨日も受診され、もうこの状態を8ヶ月間維持しています。現在の目標は、IgE<1000 IU/ml、TARC<500 pg/ml。
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これだけ綺麗になれば、仕事も恋愛もばっちりですねwink プロアクティブ治療で薬物療法離脱と寛解維持の両立をめざしてくださいgood
 
次の方は、前回も紹介した方ですね。IgE 3867 IU/ml、TARC  7023 pg/ml。この方もリアクティブ治療が行われていました。
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プロアクティブ治療に変更してIgE 1250 IU/ml、TARC  859 pg/mlとなり、お肌は真っ白shineです。「ステロイド軟膏でお肌が黒くなる。」真っ赤なであることがわかりますthink
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TARC 500 pg/mlに達していないのでまだ完全寛解とはいえず、先週受診時はインフルエンザにかかって、やや痒みがぶり返しているようでしたcoldsweats01IgE<1000 IU/ml、TARC<500 pg/mlを目標に完全寛解をめざして頑張って下さいwink
 
本人の承諾が得られれば、今後もプロアクティブ治療中の他の患者さんを紹介したいと思います。
 
(院長)
 
*小児は、TRACなど測らずともほぼ全員が寛解状態になり、多くの方が完全寛解になっています。これは母親が努力してしっかりと外用してくれるためですね。みなさんまじめです。成人の方は、なかなかコンプライアンス(アドヒアランス)が保てない方が多いです。よって、定期的に受診されないので、仕方なくリアクティブ治療になっている方も大勢おられます。
 

〠918-8105 福井県福井市木田3丁目2605 
にしむら皮フ科クリニックのホームページ

2013年1月12日 (土)

TARCを使用したアトピー性皮膚炎の治療

本日は、TARC(ターク)を使ったアトピー性皮膚炎(以下アトピー)治療について解説したいと思います。通院患者さん用に書いたもので、やや難解ですがご容赦ください。
 
当院では、特に重症の成人アトピーの患者さんにTARCを使ったプロアクティブ治療を導入しています。
 
 
(1) TARCとは一体なんでしょうか?
 
TARCとは、Thymus and Activation-Regulated Chemokineの略で、アトピーの患者さんの皮膚から過剰産生されている皮膚の炎症を引き起こす物質(正確にはアトピーの炎症を引き起こすTh2細胞(リンパ球)を病変部に引き寄せるケモカイン)です。外用治療で皮膚が正常になってくると低下していきます。よって、治療効果や重症度の判定に有効です① 自分のアトピーの重症度が数値ででてくるのですhappy02
 
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(塩野義製薬ホームページより引用)
 
しかしもっとも大切なことは、治療によってTARCが十分に低下すれば目標500 pg/ml以下「症状が全くない寛解した状態にする」ことができます②happy02そして長期間この状態を維持すれば、本当に完治してしまう方もおられますgoodこの長期間の維持に導入される方法こそがプロアクティブ治療shineであり、近年その有効性が確認されてきています③
 
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(2) プロアクティブ治療の実際
 
(a) アトピーの皮膚は、炎症細胞が浸潤して各種サイトカインを放出し、あたかも火事のように炎症が起こっています(下図(a)および下写真)。この部分の表皮細胞からはTARCが放出され、さらに炎症細胞を引き寄せるという悪循環が起こっています(TARCサイクル)。
Photo
 
下写真 11才男性 12/03/22 (IgE: 3867, TARC: 7023) 
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(b) 薬物治療(ステロイド軟膏やプロトピック軟膏)にて一旦症状は無くなりますが、皮膚の下には炎症細胞が残っており、薬物治療をやめるとすぐにぶり返します(下図(b)および下写真)。TARCは、まだ500pg/mlには達していません。ここでやめれば、TARCが上昇して再燃悪化してしまいます。元の木阿弥ですshockここで薬物療法をいきなり止めずに、しかし徐々に離脱をはかって行きますhappy01
Photo
 
上写真と同一人物 12/12/10 (IgE: 1250, TARC: 856) 
現在症状は軽微であり、次に述べる(c)完全寛解をめざしプロアクティブ治療中
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(c) 外用のレベルを下げるか、あるいは頻度を下げながら徐々に薬物療法を離脱し、かつTARCを下げていきます。TARCが500pg/mlを切ってくると少々のことでは悪化しませんので、大胆に外用頻度を下げて行くことも可能です。週1〜2回の薬物療法まで持って行くことが当面のゴールです。これは下図 (c) の状態であり、この状態をできるかぎり維持しましょう。いつか外用がいらなくなる日までwink
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以上のように、TARCサイクルに陥らない様に、症状がないにもかかわず積極的に外用継続(しかし、徐々に薬物療法離脱)して寛解状態を維持して行く方法をプロアクティブ治療shineといいます。症状があるときだけ(あわててsweat01)外用する方法は、リアクティブ治療といいます。プロアクティブ治療の方が、結局は少ない外用量で寛解状態を長く維持できるだけでなく、長期寛解から治癒の可能性もでてきます②③happy01
 
上記のプロアクティブ治療の図は、第61回日本アレルギー学会春期学術大会 福家辰樹氏(浜松医科大学小児科)の発表より引用(一部改)。写真は当院通院中の患者さんのもの。
 
通院中の患者さんは、是非(C)の完全寛解をめざして頑張って下さいhappy01次回のアトピーに関するブログでは、実際のプロアクティブ治療中の患者さんを紹介したいと思います。
 
(参考文献)
①玉置邦彦ら:日本皮膚科学会雑誌 2006; 116: 27‐39.
②片岡葉子ら: 皮膚の科学 2012; 11(1): 2‐11.
③Schmitt J et al: Br J Dermatol. 2011; 164: 415‐28.
 
(院長)
 
TARCは、英語読みでは「ターク」ですが、これを発見した塩野義製薬からは「タルク」と呼んで下さいとのことでした。しかし、「ターク」が多数派になりつつあります。
 

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2012年4月18日 (水)

ステロイド軟膏の副作用とは?

副腎皮質ステロイド(以下ステロイド)外用剤(塗り薬)の副作用を誤解している方が結構おられますbearing

 

当院の患者さん向けに簡単な説明をしたいと思いますhappy01

 

当院でもっとも使用量の多いロコイドのデータ(承認時までの調査及び使用成績調査)をまず示します①。

 

19018人中、副作用発現はたったの58人(0.3%)。 ほとんどが、かゆみと刺激感(20人)>にきび様皮膚炎(9人)です。

 

気を付けなければいけないのは、にきび(ニキビ)くらいですね。wink  

 

何もおそろしい副作用などありません。効果と安全性は確立しています②。

 

まだあまり知られていませんが、強いクラスのステロイド外用剤まで普通に市販されています。

 

本日、あるドラッグストアで見た外用剤の棚です。これらのほとんどにステロイドが入っていましたね。 それも当院が普段使用しているものより強いものが結構ありました。
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ムヒ(EX)にもステロイドが入っていました。これはロコイドより強いですね。

 

国は、ステロイド外用剤はもう医師の診察が必要ないくらいに安全だと考えているのでしょうかねcoldsweats01
 

しかし安全とはいっても、乱用が少し気になります。長期に使用される場合は、医師や薬剤師に相談されることをお勧めしますconfident

 

よく聞かれる質問に、「皮膚が黒くならないの?」「ステロイドが蓄積するのでは?」がありますが、これらの副作用はありませんcoldsweats02

 

人間の体からは、ステロイド外用剤よりはるかに多量のステロイドが副腎より毎日生産されていますconfident

 

人体にとって、ステロイドは大切なホルモンなんです。happy01

 

もともと多量にもっているのに、黒くなるとか、蓄積やデトックス(解毒)なんていうのはおかしな話ですねcoldsweats01

 

cherry強いステロイド外用剤(クラスⅡ)であるアンテベートのデータ(承認時までの調査及び使用成績調査)も示しますね②。

 

7,875例中105例(1.33%)に副作用が発現した。
主な内容は、かぶれによると思われるかゆみ(0.08%)や刺激感(0.11%)が稀にでる。毛のう炎&にきび(ニキビ)水虫皮膚萎縮が、稀に(0.3%)あるいはごく稀に(0.008〜0.009%)でる。

 

皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)や水虫を専門医はまず起こしませんので、これも注意すべきはかぶれと毛のう炎&にきび(ニキビ)ですね。

 

(文献)
(1)  ロコイド軟膏&クリーム 添付文書
(2) 古江 増隆ら:日皮会誌:119(8),1515―1534,2009.
(3) アンテベート軟膏&クリーム 添付文書

 

(院長)

 

apple最近ステロイド外用剤の依存症(topical steroid addiction)を心配する患者さんをたまに見かけます。 この言葉は、1978年にKligmanがあまり有名でもない雑誌に載せたのが最初で最後ですね。彼もそれ以後使用していないようですし、ここ10年以上そのような論文を少なくとも英文では見たことがありません。で、PubMedで調べてみたらやはり90年代に2件の論文のみでした。それも1件は顔にニキビが出たというもので、もう1件は美容レーザー治療後のステロイド使用による副作用(にきび様皮膚炎)でした。これらの論文は、上述の副作用(にきびなど)が、まだあまり世間に知られていなかった頃に、副作用の注意喚起をするために書かれた論文ですね。この死語のような言葉をまたぞろ使用している人がいるのには驚きですcoldsweats02 

 

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