アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係
本日より11月になりました。めっきり寒くなりましたね
寒くなると、乾燥肌の患者さんが急増してきます。それにつれてアトピー性皮膚炎(以下アトピー)の患者さんも悪化してくる時期です
プロアクティブ療法中の患者さんは、悪化時は外用頻度を高めて早めに受診してください。例えば、週1−2回外用の患者さんは、週2−3回の外用に頻度をあげるということです。
ところで、最近よくきかれる質問があります。
『アトピーは、なにか食べ物が原因ではないのですか? 食事制限はしなくてよいのですか?』というものです。
アトピー性皮膚炎は、長い間単なるアレルギー性疾患と考えられていたために、次の流れが信じられてきました。
ですので、アレルゲンの除去すなわち原因食物を除去すればアトピーは予防できる、あるいは治ると信じられてきました
長年の研究から、食物制限はアトピーの予防効果も治癒させる効果もないことがわかってきました[1][2][3]。
さらに多くの研究から、食物アレルギーとアトピーの関係は以下の図のようになることがわかってきています[4][5]。
すなわち、アトピーを放置する(外用治療をしない)と食物アレルギーを併発するというのが正解です。
よって、アトピー発症早期からの外用(ステロイド&保湿剤)治療がアレルギー感作を防ぎ、食物アレルギーを予防あるいは改善させるのです。また、外用治療はアトピーそのものを予防する効果があることもわかって来ています[6]
さらに、安易な食物制限はかえって食物アレルギーを悪化させます。
下グラフは有名な臨床研究ですが、英国の子供はピーナッツを厳しく制限しているのにピーナッツアレルギーが非常に多いのです。イスラエルの子供は、ピーナッツをよく食べているのにピーナッツアレルギーが非常に少ない[7]
どうやら、アレルゲン(この場合はピーナッツ)の経口摂取(食べること)は、アレルギーを抑制するようです[4][7]。なんでもよく食べた方が良いようですね
外用治療をおろそかにして、食物制限に精を出している方をよくみかけますが、如何に間違った方向で努力しているかがわかるかと思います
(参考文献)
[1] Clin Exp Allergy 2004; 34:1220-1225 (Study of prevention of allergy in children of Europe)
[2] Pediatr Allergy immnol 2002; 13:32-7 (National asthma campaign manchester asthma and allergy study)
[3] Pediatrics 2008; 122(1): 115-112
[4] N Engl J Med 2003; 348:977-85
[5] J Allergy Clin Immunol 2008; 121:1331-6
[6] J Am Acad Dermatol 2010; 63:587-93
[7] J Allergy Clin Immunol 2008; 122:984-91
(院長)
*アトピーを放置すると、生後1年で食物アレルギーを起こす確率は、アトピーの無い子供にくらべて5倍以上という報告もあります。
*すでに食物アレルギーになってしまった方は、その重症度に応じて制限をする必要があります。しかし、それでアトピーが治るわけではありません。