粉瘤腫(ふんりゅうしゅ)の超音波検査
粉瘤腫(アテローム)は、皮膚の下の袋状の構造物(嚢腫)で、中に垢(角質)が溜まってくる腫瘍です。表皮嚢腫ともいいます。
皮膚科診療の中では、最も頻回に遭遇する良性の皮下腫瘍です。
診断には、超音波検査(以下エコー)が最も役立ちますというか、エコーがなくては正しい診断も治療もできません。
当院では、最新型のエコーVenue50を使用して診断をしています。
(写真はGEのホームページより)
典型的なエコー所見は、下写真のように皮膚との接触部位(dermal attachment:⇧⇧))を有し、底面後方エコーの増強(*)および側方エコーと呼ばれる低エコー領域(⇧)を両端に認めるなどです。
腫瘍内部は不均一な軽度高エコーを示すことが多く、dermal attachmentのところに開口部(outlet or punctum)が認められれば、まず粉瘤腫で間違いありません。
このような炎症を起こしていない粉瘤腫は、くりぬき(へそぬき)術が術創も小さくて良い適応になります。
くりぬき術の過去のブログ:http://clinic-n.mitelog.jp/blog/cat7571583/
下写真の患者さんは6cm以上の腫瘍でしたが、くり抜き術で4mmのキズ(創部)から腫瘍(嚢腫)を取り出しましたこの程度の傷口だと数ヶ月後にはほとんどわからなくなりますね
この粉瘤腫が、真っ赤に腫れて炎症を起こしたものを炎症性粉瘤腫(下写真)と言います。
エコー像では、本来の腫瘍部位(⇧)を飛び越えて、膿が貯留して拡大し、境界が不鮮明になっています(⇧⇧)。この部分が破れたんですね
下写真の患者さんもかなり腫れています。エコーでは、嚢腫が一部変形して不鮮明になっています(⇧)。その周辺では、内容物が漏れて炎症を起こし高エコー域が拡大しています(⇧⇧)。
以上のように、炎症性粉瘤腫は細菌感染ではなく、皮内に漏れた内容物による炎症です。
すでに袋は破けており、後に癒着も起こしてくるため、くりぬき術はできません。感染ではないので抗生剤の内服はほとんど効果がありません
この内容物が漏れた箇所に、極少量の抗炎症剤を的確に注入すると、たちどころに炎症が治ります
さらに粉瘤腫は、腫瘍内部に血流を認めません。下写真は、左右で異なる患者さんですが、両者とも病変部の血流が豊富です。この患者さん達のしこりは、嚢腫性ざ瘡(にきび)でした。
(カラードプラ)
顔面の嚢腫性ざ瘡は、よく粉瘤腫と間違われるので注意が必要ですですからエコー検査は必須ですね。特に顔面では。
粉瘤腫だけではなく、あらゆる皮膚のしこりをエコーで診断しています。
最近皮膚のしこりができて気になる方は、是非受診してください
(院長)