爪の黒子(ほくろ)の診断(ネコの黒子の診断付き)
先日、爪に黒子(ほくろ)ができて、悪性が心配になり受診された方がおられました。そのときの写真がこれです。
昔、「巨人の星」という漫画にこれとそっくりな場面がありました。最近の若い方には「巨人の星」といってもわからないでしょうけどねスポ根漫画の元祖ともいうべきものです
主人公の星飛雄馬が、ある女性と恋に落ちますしかし、その娘の指の爪には黒子があり、それがメラノーマ(悪性黒色腫)であったため命を落とすというストーリーでした
(文献⑴より引用)
まさに、先ほどの写真とそっくりですね本当に、これはメラノーマなのでしょうか?
結論からいうと、これはメラノーマではありません単なる爪下血腫です。血マメのようなもので、もちろん良性です。爪の黒子というのは、下写真のように爪の伸長に従って細長くなるからです。
下写真は、ダーモスコピー所見です。黒い線条(筋)が奇麗に並んでおり、メラノーマのような所見はありません。悪性の場合は、もっと線条が乱れ、Hutchinson徴候(周囲皮膚への色素のしみ出し)やwhitish veilも見られたりします。
皮膚科医でもない漫画の作者が、このような間違い(?)をおかすことは仕方のないことですが、この作品がかえって黒子の癌、メラノーマの啓蒙につながったという見解もあります⑴
爪に黒い線状のスジがあり、色調の変化や幅が拡大してきたときには、皮膚科専門医を受診してダーモスコピー検査をしてもらうと安心ですね
話がかわって、当院のアイドル猫ノラ君の鼻にも黒子ができました(→)。最近大きくなってきています
師長が心配になって調べてほしいというので、ダーモスコピー検査をしました(→)。猫は、はじめてなんですが・・
拡大すると網の目のような所見が認められます(下写真)。これを色素ネットワーク(pigment network)といいます。規則的で定型的な網目の場合は、typical pigment networkといいます。規則的でないときは、atypical pigment networkといって悪性の可能性があります。ノラの場合は、恐らく前者ですね。
人間の黒子にも同じようなpigment networkが存在します。下写真は、クラーク母斑という人間の良性の黒子ですが、ノラとよく似たtypical pigment networkが認められます。何故網目構造を呈するかは、専門的過ぎるのでここでは解説しません。
以上のことから、ノラの黒子は良性と診断しました間違っていたら許してね猫は、はじめてなので・・・
ちなみに、猫の黒子が心配なときには獣医さんにご相談くださいね
(参考文献)
⑴ Itakura E, Uhara H: Malignant melanoma in Star of the Giants (Kyojin no Hoshi) Lancet Oncol 2011; 12(6): 525.
(院長)
本文中のダーモスコピーの写真は、全てhandyscopeを使用しています。
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