アトピー性皮膚炎の乾燥肌は、単なる乾燥肌ではない!
アトピー性皮膚炎(以下アトピー)の
ザラザラとした乾燥肌をアトピックドライスキンと言います。
これに保湿剤を塗って
悪化させてくる乳幼児が後を立ちません
アトピーの肌は、一見正常に見える部分でも、
免疫病理学的には、
赤くて痒い部分となんら変わりがありません。
保湿剤には、T細胞の浸潤や炎症性サイトカインを抑える作用はありません。
さらにアトピーの肌はかぶれ易いため、
保湿剤のみ(単純塗布)では、かぶれを誘発して、
アトピーを増悪させる可能性が高いのです
ですから当院では、寛解に至るまでは
基本的に保湿はしません。
そうすると、よく勉強されているお母さんから、
積極的な保湿がアトピーを予防すると反論されます[1]
しかしそれは、予防効果であって、
一旦発症したアトピーのことではありません。
さらに最近の著名な2つの研究では、
保湿によるアトピーと食物アレルギーの予防効果は、
ともに否定されています[2][3]
そのうちの1つの論文BEEP試験では,
「Our study shows that families with eczema, asthma, or allergic rhinitis should not use daily emollients to try and prevent eczema in their newborn.」
と結論づけています[2]
では、保湿って必要ないの?
いや、必要な時期があるんです。
しかし、それを見極めるのは容易ではありません。
受診中の患者さんは、
必要な時期が来たらこちらからお知らせします
(参考文献)
[1] Horimukai K,et al: J Allergy Clin Immunol 34: 824-30, 2014
[2] Chalmers JR, et al: Lancet 395(3): 962-972, 2020
[3]Lancet 399(10344): 2398-2411, 2022
以上の内容は、小児(特に乳幼児)のアトピー性皮膚炎を念頭に書いています。大人はもう少し複雑なので、またの機会に書きます。
(院長)