指趾粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)の診断と治療
今回は、専門医向けのちょっとだけ難しい話題です
ここ数日、指先に下写真のような膨らみ(→)ができたという患者さんが何人かこられました。
これは、指趾粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)あるいは単に指趾ガングリオンともいいます。
指先に粘液がたまって起こります(*)。
医師の間でも治療は厄介なものと思われていますが、意外に簡単に治療できるケースもあります
まず診断です。
すごく簡単な方法は、下から懐中電灯をあててみると腫瘍を光が透過します。これをFlash-Powered Transilluminationといいます①
器械があれば、エコー検査でもよいと思います。巨細胞腫など鑑別を要するものが結構ありますからね。
治療なんですけど、放置というのも1つの手ですね。 患者さんが納得されれば・・・
でも、そればかりではちょっとさみしいですよね
有効な方法の1つは、中身(粘液)を針で突いて出し(絶対に自分でしないでください)、冷凍療法することですね。
私は、液体窒素でspray-freezingします(http://clinic-n.mitelog.jp/blog/2012/09/post-c56e.html) 。アプリケーター使って限局的に冷凍しています。
これは、内部を炎症で癒着させるためなんです。綿棒でするよりspray-freezingの方が、痛みがすくなく成績もいい感じですね
中身を抜いて(少しだけ残して)冷凍しないと、痛すぎて患者さんから苦情がきますので要注意です。
再発することはありますが、気楽に行える治療ですね
これでもダメなら手術ということになります。手指に関していうと実は簡単です
下写真のようにガングリオン周囲にフラップ(皮弁)を描いてめくり、戻すだけです(下写真)②
(上写真:左から、術前、作図、フラップ作成、縫合、術後)
嚢腫(cyst)は必ずしも取る必要はありません。めくって戻すだけ! これだけです。
再発率8%と報告されています②
指趾ガングリオンを昔はよく手術しました。この方法結構よかったですよ
先日(10/17)、福井赤十字病院のカンファレンスでもガングリオンの治療が話題に上りました。そのとき私がしゃべった内容をブログにしてみました
*指趾粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)の粘液の由来により、関節液のもれでおこるganglion typeと、線維芽細胞からのヒアルロン酸過剰産生によるmyxomatous typeの2つに分類されます③
(参考文献)
① Calorego C, et al : Arch Dermatol 2012; 148(5) : 1-1.
② Clliford L : Arch Dermatol 2005; 141(12) : 1560-4.
③ Shimizu’s Textbook of Dermatology P383.
(院長)
以上の手術は、足趾では再発率が高いようです。この方法は、指ではjoint fluid leakageを処理する必要がないということです。手術法は色々ありますので、これがベストということではありません。この方法でも再発の可能性はあり、患者さんに十分説明する必要があります。
液体窒素療法はうまくいくまで2−3週間おきに1〜3回程度行います。