当院には、毎日多勢の
アトピー性皮膚炎(以下アトピー)のお子さんが受診されます
受診時に、お母さんからの質問で多いのは、
「うちの子のアトピーは、何の食べ物が原因でしょうか?」、「卵などの除去食はしなくてよいのでしょうか?」などです
ずばり回答すると、アトピーの原因は食物アレルギーではありません。ですから、除去食は基本的に(というかほとんど)行う必要はありません。しかし、
アトピーを放置しておくと、経皮膚感作(過去のブログ参照)により、いずれ
食物アレルギーや
喘息などが併発してきます
[1][2][3][4]
では、アトピーの原因は一体何なのでしょうか?
当ブログでも再三述べているように、皮膚のバリア機能異常(簡単に言えば乾燥肌)が、発症に大きく関わっているようです[2][4][5]
実際に、アトピー発症のハイリスク(両親にアトピーがあるなど)の赤ちゃんを生後まもなく保湿治療をすることで、バリア機能を改善させてアトピーの発症を抑えたというエビデンスレベルの高い報告が最近なされました(下グラフ)[4]
(アトピー性皮膚炎の累積発症率を示すカプランマイヤー曲線)
このグラフが意味するところは、保湿治療をした子の方(上の線)が、しなかったコントロール群(下の線)に比べてアトピーの発症率を3割も減らせたというものです。
しかし、この著者も述べていることですが、一旦発症したアトピーは、保湿治療のみでは改善しません。
保湿剤以外の外用剤(ステロイド軟膏やプロトピック軟膏など)も使用して積極的に治すことが必要です。当院ではプロアクティブ療法ですね
これにより、食物アレルギーや喘息などの発症を予防するだけでなく[1][4]、すでに発症しているこれらの疾患の症状も改善することが知られてきています
以上のことは、過去のアトピー性皮膚炎のブログに詳しく書いていますので参照してください。
(参考文献)
[1]Lack G:J Allergy Clin Immunol. 2008;121:1331-36.
[2]秋山真志: 日医雑誌 2010;138:2536-7.
[3]Dharmage SC, et al.: Allergy. 2014;69:17–27.
[4]Horimukai K,et al.:J Allergy Clin Immunol.2014;134:824-30.
[5]Simpson EL, et al.: J Am Acad Dermatol 2010;63:587-93.
(院長)
以前、[4]の論文の責任著者である大矢幸弘先生(国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科医長)の講演を聴いたときに、除去食はほとんどしない、アトピー症状のコントロールが悪いのは単に外用ができていないからだと断言されていましたね。同感です。
[4]の論文では、保湿剤として2e(ドゥーエ)を使用していたようですが、責任著者の大矢先生は、ワセリンでも同様の結果が出るであろうと述べておられます。
最近オリーブオイルや馬油を赤ちゃんの保湿剤として使用している方が増えています。経皮感作の起こりやすい赤ちゃんに、これら動植物性のオイルを使用することはおすすめしません。