当ブログの円形脱毛症の治療で度々でてくる局所免疫療法とは何でしよう?
局所免疫療法は、かぶれ療法とも呼ばれ、スクアレン酸ジブチルエステル(SADBE)、ジフェニルシクロプロペノン(DPCP)などの物質を用いて人工的に患部をかぶれさせ、毛根を攻撃するリンパ球などの免疫反応を変調させる治療法です。
比較的副作用が少なく(まれにひどくかぶれますが)、ガイドラインでは小児の円形脱毛症にも推奨されています(1)
下写真の患者さんは、全頭型の円形脱毛症で、昨年12/28より局所免疫療法を行っています。本人より掲載許可が得られましたので供覧します 今年の8/19の時点では、90%以上の改善をみています
(上写真:2010/12/28、下写真:2011/8/19)
さらに局所免疫療法は、イボに対する免疫を惹起させることが知られており、治療困難な多発性疣贅にも威力を発揮します 下写真の患者さんは、先週治療が終了しました。
最近ではこの治療法が、皮膚がん、とりわけ悪性黒色種(ホクロのがん)に対する腫瘍免疫を惹起する可能性が示唆されています(2)。局所免疫療法で、皮膚がんが消退したり、転移巣が縮小した症例が報告されてきています(2, 3)。
将来、皮膚がんに直接外用することで、自己ワクチン療法のような治療法も開発されるかもしれません(2)。
(参考文献)
(1) 荒瀬 誠治、他. 日皮会誌 2010; 120: 1841―1859
(2) 藤原 進、他. 日皮会誌 2011; 121: 1595―1599
(3) Wac C, et al. Cancer Immunol Immunother. 2002; 51: 431-439
(院長)
今回は、重症円形脱毛症(頭皮面積の50%以上の脱毛)の治療についてお話しします。
発症より6ヶ月以内の重症円形脱毛症にもっとも有効な治療法は、ステロイドパスル療法(以下パルス)です(1)。
発症後3ヶ月以内であれば、パルスによる完全寛解率は92.9%ですが、1年以上経過している患者さんの完全寛解率は0%という報告があります(2)。如何に早期治療が大切かがわかります
不幸にも、パルスが不十分な結果に終わった患者さんの次なる治療法は、局所免疫療法を行います(1, 3)。それでもダメなら当院ではエキシマライト光線療法(以下エキシマ、下写真)を行います。それでもダメなら・・・・。これ以上は企業秘密です
では、現在治療中の重症円形脱毛症の患者さんの中から掲載許可が得られた方を2例提示します。
【Case 1】
以前当ブログで紹介した患者さんです。全頭型脱毛のため2度のパルス、ナローバンドUVB、局所免疫療法などを行った結果、ここまで改善しました。しかし、半年間の局所免疫療法でもこれ以上改善はしませんでした。
(下写真:2010/11/26)
よって、エキシマを行った結果、徐々に発毛(上写真:2ヶ月後、下写真:5ヶ月後)。
現在、エキシマ治療終了から3ヶ月経過するも再発はありません。現在は、アレグラのみ内服されています。
【Case 2】
次の患者さんは、1年前より他院でプレドニン25mg/日内服をされていました。当院に転院されたためパルスを行い、内服プレドニンを2ヶ月かけて漸減中止しました。ステロイド漸減と同時に局所免疫療法を開始しましたが、副作用の接触皮膚炎(かぶれ)がひどくなり中止を余儀なくされました。
(下写真:2011/03/08、当院初診時)
幸いにも、エキシマに変更してみるみる発毛してきました。この患者さんは現在もエキシマのみで治療中です。
(下写真:2011/08/06)
とにかく、重症の円形脱毛症は早期に治療を開始することが大切です。早期治療によりしっかりと進行を食い止めたからこそ、局所免疫療法やエキシマが生きてきます。
軽症と思われる円形脱毛症でも、急激な悪化をみることがあります。円形脱毛症になったら、すぐに皮膚科専門医にて適切な治療を受けましょう。
(参考文献)
(1)荒瀬 誠治、他. 日皮会誌 2010; 120: 1841―1859
(2)Myung IM, et al. J Dermatol 2011; 38: 767–772
(3) 小野田 雅仁、他. 日皮会誌2011; 121: 699-704
(院長)
*軽症〜中等症の患者さんで、いきなりパルスやエキシマを行うことはありません。標準的な内服や外用、あるいは局所注射などで治療を行います。
円形脱毛症に対するエキシマライト光線療法の経過報告です。
当院では、難治性の円形脱毛症にエキシマライトを照射しています。
経過写真(上:2010/11/26、中:3/11、下:4/27)
予想通りゴールデンウイーク前に光線療法を終了することができました 今後は、外用(ぬり薬)のみで経過を見ていく予定です。しかし、ここまでくるのに2度のパルス療法→ナローバンドUVB→ステロイド内服→SADBE療法→エキシマと4年以上の歳月がかかってしまいました でもなんとかうまくいってよかったですね
ただ、エキシマライトが円形脱毛症に万能というわけではありません。これも、パルスやSADBEと同じように有効な治療手段の1つにすぎません。エキシマライトが全く効果が無い方もおられます。症例ごとにオーダーメイドな治療ができればと考えています。
新たなエントリーがあればまた報告したいと思います。
(院長)
エキシマライト光線療法の治療経過です。
当院では、難治性の円形脱毛症にエキシマライトを照射しています。
昨年11月からエントリーしていただいた患者さんのその後の経過を示します。
治療開始から4ヶ月が経過しました。
(写真上:11/26,、中:2/18、下:本日3/11)
かなり改善してきました 患者さんには、ゴールデンウイーク頃にはエキシマを終了できそうだと伝えました
(院長)
*受付時間変更について
4月1日より受付終了時間が15分早まり、5月より土曜日の午後診がなくなります。
受付時間:
午前診は8:15〜12:00/午後診は2:15〜18:00までになります(土曜日は16:00のままです)。
エキシマライトの治療経過です。
当院では、難治性の円形脱毛症にエキシマライトを照射しています。
最近エントリーしていただいた患者さんのその後の経過を示します。
治療開始から既に3ヶ月が経過しました。
(写真上:12/18,、中:1/14、下:本日2/18)
かなり改善してきましたね ゴールデンウイーク頃までには何とかしたいと考えています また、写真をアップしたいと思います。
最近、ブログのお陰かエキシマライトを希望されて受診される患者さんが多くなりました しかし、治療はあくまでも日本皮膚科学会の円形脱毛症治療ガイドラインが基本です いきなりエキシマライトを当てることはありません。
エキシマライトは、急速に進行する全頭型脱毛症は苦手なようです。まずは、ステロイドパルスが必要です。慢性期の脱毛症でもSADBE療法を優先させています。
(院長)
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